「ポスト黄金世代」が躍動した。東海大が5時間13分15秒で16年ぶり2度目の優勝を果たした。

3大駅伝初出場のアンカー名取燎太(3年)が青学大を逆転し、独走状態でフィニッシュテープを切った。同じ3年生の西田壮志も4区で区間賞。「黄金世代」の4年生主力が欠場の中、層の厚さを示した。来年1月2、3日の箱根駅伝連覇へ弾みを付けた。2位は1分44秒差で青学大、1分49秒差で駒大が3位に食い込んだ。

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「黄金世代」が4年生になった東海大のヒーローは3年生だった。最終8区。首位青学大と2秒差でたすきを受け取った名取は早々と仕掛けた。一騎打ちの中、残り約15キロもある中で前に出る。「高校以来の駅伝で気合が入っていた」。そのまま引き離し、勝負を決した。勢いは衰えず、記録は57分46秒でムセンビ(東京国際大)に次ぐ区間2位。7区で松尾(4年)が譲った首位を奪還。両手を広げ、歓喜のフィニッシュテープを切った。チームメートからは胴上げされた。

華やかな4年生世代の裏で、今年の箱根駅伝Vの栄光の影で、孤独かつ地道な我慢の時を過ごしていたのが名取だった。入学後からアキレスけんや足首の故障の繰り返し。「再生工場」(両角監督)とされた別メニューで、年末から初春まで日曜朝に神奈川県内の寮近くにある丹沢の起伏ある山道を歩いていた。その距離は約50キロ。しかも1人だけ。折れそうになる心は「優勝した箱根駅伝を走れなかった悔しさ」で堪えた。夏からは長距離に特化し、最長区間19・7キロのアンカーを任された。苦闘の冬を過ごし、花を咲かせた。

名取だけでなく、同じく3年生の西田も4区で区間賞を獲得し、流れを呼び込んだ。18年アジア大会1500メートル代表の館沢、今年の日本選手権3000メートル障害覇者の阪口、高校時代から名を知られた鬼塚、関。その「黄金世代」と呼ばれる象徴たる4年生が故障もあり、欠場を強いられた。両角監督は「飛車、角、桂馬ぐらい抜けている」。その危機を救ったのが、4年生の背中を見て、育った後輩だった。万全でないからこそ、2位青学大との1分44秒差は強さを際立たせた。

2カ月後の箱根駅伝では故障者も復帰する。「箱根では4年生の力が必要」と指揮官。「黄金世代」と「ポスト黄金世代」が融合し、連覇に挑んでいく。【上田悠太】