新型コロナウイルスは、大学生ランナーの晴れ舞台も奪った。出雲全日本大学選抜駅伝(10月11日)を主催する島根・出雲市と日本学生陸上競技連合は27日、感染拡大のため大会を中止すると発表した。1989年(平元)に始まった大会が開催されないのは、台風の影響で取りやめとなった14年以来、2度目となる。

3年前の覇者、東海大の両角速監督は「残念としか言いようがない。学生の気持ちばかりを優先させてはいけないかもしれないが、現場で指導する監督という立場からすると、学生は3大駅伝を目指してきているので非常に残念」と話した。

出雲と同じく「大学3大駅伝」に数えられる全日本大学駅伝(11月1日)、箱根駅伝(来年1月2、3日)は現状、開催に向けての準備を進めている。しかし、3大駅伝の初戦である出雲の中止が、今後の駅伝の開催可否の判断に影響を及ぼす可能性もある。両角監督は「同じように難しいのかもしれないが、何とかいい方法はないのかと思う」と開催を願った。

出雲駅伝も、はじめは開催を前提に準備が整えられていた。しかし、最近になって感染が全国に再拡大。終息の見込みも立たない状況で、風向きが変わった。規模縮小も含めて検討したが、選手、関係者の移動によるリスクの懸念が高まり「安全な大会の運営が困難」との判断に至った。

日本陸連の競技会運営のガイドラインには、感染した場合の重篤化を防ぐため「65歳以上の競技役員には、原則として、委嘱しないことが望ましい」と記されている。出雲市の長岡市長は会見で「ボランティアの多くが65歳以上。若い人に代えるのは困難。またスタート、中継所、ゴール地点、観客の3密を避けるのも厳しい。大会に関わる人の安全を最優先にした結果」と経緯を説明した。

◆出雲駅伝 島根・出雲大社正面鳥居前をスタートし、フィニッシュは出雲ドーム前。45・1キロを6人でつなぐ。区間距離が短く「高速駅伝」として有名。地区学連選抜チームも含め約20チームが参加。全日本大学駅伝、箱根駅伝と並ぶ大学3大駅伝の1つ。最多優勝は山梨学院大の6回。大会記録は15年青学大の2時間9分5秒。