陸上男子110メートル障害で元日本記録保持者の金井大旺(24=ミズノ、函館ラサール)が、今季初戦を予定する8月23日のセイコーゴールデングランプリ東京(国立競技場)から、東京オリンピック(五輪)を目指す。「大きなケガもなく、順調にできています」。新型コロナウイルスの影響で、11月30日までの記録は五輪出場に必要な参加標準記録(13秒32)には反映されないが「今年切る切らないは自分の中で意識していない。自分の走りを修正、改善していけばタイムはついてくる」。記録にとらわれずに戦えることをプラスに捉える。

昨季は初めて世界選手権に出場も予選敗退。「技術的にも全く駄目で(本番に状態を合わせる)ピーキングもうまくいかなかった」。踏切時にブレーキがかかる跳び方を修正できずに1年を終えた反省から、昨冬は体全体のバランスを意識したウエートトレに取り組んだ。肉体改造とともに、ハードル間の走りなど技術面も1から見直し「基準値が底上げできたイメージ」と、今年2月の日本室内選手権では60メートル障害の日本新を樹立した。

手応え感じていた矢先にコロナ禍で五輪が延期。「正直ショック、虚無感があった」と好調だったゆえの落胆もあったが「3月時点で技術的にまだ改善できそうな部分を発見していた」。外出自粛期間には自宅でダンベルやチューブを使い、以前は目の届かなかった細かい筋肉の補強を繰り返した。

自己記録は当時14年ぶりの日本記録更新となった18年の13秒36。五輪参加標準との0秒04差を埋める以上に大事にするのは「技術の定着」とし、「来年切るために今年はその状態を作っておきたい」。出場権獲得を前提としながらも、見据えるのは東京五輪での結果だ。金井は「東京五輪の雰囲気の中でしっかり走れる、自分のパフォーマンスを最大限に発揮できるようにしないといけない」。理想の走りが完成した先に、まだ見ぬ世界がひらけることを信じて。【浅水友輝】

◆陸上男子110メートル障害の争い 18年日本選手権で金井が14年ぶりの日本記録(13秒36)を更新すると、翌19年6月には高山峻野(ゼンリン)、泉谷駿介(順大)が同記録で並び一時は日本記録保持者が3人になった。同年7月に高山が13秒30で記録を更新、8月には13秒25まで記録を伸ばしている。北海道関連では17年世界選手権代表で13秒40の自己記録を持つ増野元太(メイスンワーク=北斗市出身)も東京五輪出場を目指して昨秋現役復帰している。

▽金井アラカルト

◆プロフィル 1995年(平7)9月28日、函館市生まれ。179センチ、73キロ。家族は両親と姉妹

◆小学 函館南本通小3年で陸上を始め、6年の全国小学80メートル障害2位(当時の道小学生記録12秒09)

◆中学 函館本通中3年の全道中学110メートル障害で14秒37の道中学記録

◆高校 函館ラサールでは1年で国体4位、2年の日本ユース2位、3年連続出場した総体の最高成績は3年の5位

◆大学 法大では1年のアジアジュニア選手権優勝、世界ジュニア選手権は準決勝進出。日本選手権では3年に3位、4年は5位。4年時にはユニバーシアードで4位、日本学生対校選手権で優勝

◆社会人 福井スポーツ協会所属の18年に日本選手権で当時の日本記録を14年ぶりに更新して初優勝。同年のジャカルタ・アジア大会で7位。翌19年2月にミズノに所属変更。同年の日本選手権は準決勝でフライング失格。初出場の世界選手権では予選敗退。20年2月の日本室内選手権では60メートル障害の予選で7秒61を記録して同種目12年ぶり日本記録更新。決勝はフライング失格