諦めずに、優勝を-。

14日号砲の名古屋ウィメンズマラソン(名古屋市・バンテリンドームナゴヤ発着)に臨む岩出玲亜(26=千葉陸協)は力を込めた。

「強みはハングリー精神かなと思う。現状、所属先もないし、安定した収入もないので、誰よりもハングリー精神はあると思う」

12日に名古屋市内で行われた記者会見。招待選手4人の最後にマイクを握り、壇上で表情を引き締めた。

2020年は環境が大きく変化した。8月で前所属先との契約が満了。用具面ではアディダスと契約できたが、活動費は練習会イベント開催などで捻出する。新型コロナウイルスの影響もあり、スポンサー獲得は容易ではない。

コロナ禍でトラックが閉鎖されていた時期は、ロード練習で地力を高めた。11月には5000メートルで5年ぶりに自己記録を更新。だが、今年1月9日に練習で転倒し、左膝を強打した。同月31日の大阪国際女子マラソンは途中棄権となり、歯がゆさを味わった。

支えはファンだった。大阪国際前からスタートしたクラウドファンディングのタイトルは「名古屋ウィメンズマラソン2021で優勝し喜びを分かち合いたい」-。

合宿への支援などを目的とした取り組みは目標の50万円を超え、137万2888円が集まった。2月2週目には痛みが消え「質の練習はまだ早いかなと思い、距離とボリュームで何とか補ってきた」。ファンの思いを背負い、できる限りの準備を行ってきた。

今の岩出に、優勝を諦める選択肢はない。14年の初マラソンで10代日本女子最高記録をマークし、自己ベスト2時間23分52秒を持つ実力者は迷わずに言った。

「1年間かけて優勝を目指してやってきている。難しいことにはなりそうだが、最後まであきらめずに優勝を目標に頑張りたい」

7年連続の名古屋で、全ての力を出し尽くす。【松本航】

◆岩出玲亜(いわで・れいあ)1994年(平6)12月8日、三重県津市生まれ。津市立一志中3年時に全国中学駅伝で2区を走り区間7位でチームも7位。愛知・豊川高3年時の全国高校駅伝で1区を走り5位でチームは準優勝。卒業後にノーリツに入社。初マラソンは14年横浜国際女子で2時間27分21秒の3位。17年にドームへ移籍。19年の名古屋ウィメンズで自己ベスト2時間23分52秒を記録し、日本人トップの5位。