2人の実力者が、日本最高峰の跳躍で盛り上げた。

衛藤昂(30=味の素AGF)が、東京五輪参加標準記録にあと3センチと迫る2メートル30で優勝した。試合後のオンライン記者会見。その言葉に充実感と悔しさがにじんだ。

「走り高跳びの難しいところなんですよね。ここに来るまでに何人に『(2メートル)30までいい跳躍だったね』と言われたか。欲にまみれて(2メートル33を)跳んだのが良くなかった。30を跳んだ跳躍で、高さが出ていたと思うので、その再現性を高めることで、33が見えてくると思います」

2メートル15からスタートし、20、24、30と全て1発成功。五輪参加標準記録の2メートル33に挑んだが、3本全て失敗となった。わずか3センチだが、そこに難しさが詰まっている。

「(33を)意識しないようにはしました。僕は何も変わっていないつもりなんですけれど…。今日は『絶対に30は跳ぶ』という気持ちでいた。跳んだ後に『33もいく』という気持ちでいたんですけれど『絶対跳ぶ』っていうのと『跳べたらいいな』では…。『跳べたらいいな』ではなかったんですけれど、その辺が高跳びの難しいところですね」

2位に入った戸辺直人(29=JAL)も衛藤と同じ2メートル30で2位。2メートル30成功時の着地で首が軽く寝違えたような感覚になり、五輪参加標準記録の2メートル33のうち、最初の2本は「大丈夫かな」と様子見になったという。

「2本無駄にしたのが、跳べなかった要因かなと思います。1回(2メートル)30を跳んだシーズンは、それ以降も何度も跳べている。今年もそうなるように、記録を出せるようにしたい」

勝負の東京五輪シーズン。切磋琢磨(せっさたくま)しながら、3センチ上のバーを越える。【松本航】