みちのく最強ランナーが「師走の都大路」で最終章を迎える。全国高校駅伝(26日開催、京都・たけびしスタジアム=男子7区間42・195キロ)に11年連続13度目出場の学法石川(福島)男子のエース山口智規(3年)が、強い決意と覚悟を胸に刻みながら、エースとしての責務を全うする。昨年はエース区間とされる1区(最長10キロ)を務めるも結果は区間31位。チームも16位に終わり、悔し涙を流した。巻き返しを誓った最後の冬。目指す先はただ1つ。「全国優勝」で有終の美を飾る。

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無我の境地で高校駅伝の聖地・都大路に挑む。1区候補に挙がるエース山口は燃えたぎる闘志を内に秘め、気持ちを新たにした。

「常に優勝が頭にある。1人1人がベストを尽くすことができれば(優勝が)見えてくると思う。自分も1区を走るかどうかは分からないけど、どの区間でもベストを尽くしたい」

あの悪夢から立ち直り、高校3年間の真価を問う。昨年は各代表校のエースが集う1区を務めるも、大会直前のケガの影響もあって結果は区間31位。チームは3大会ぶりに入賞(18年3位、19年5位)を逃す16位と不本意な成績に沈んだ。「1カ月以上は寝つけないこともあった。走っているとフラッシュバックもした。苦しかったです」と当時の心境を明かした。

苦い過去にも逃げることはなく、大きな糧とした。敗戦の責任を一身に背負い、一回りも二回りも大きく飛躍を遂げる。11月14日に行われた日体大長距離競技会の5000メートルでは、高校歴代3位となる13分35秒16の好タイムをマークした。「ここまで良い練習ができている。状態も良いと思います。(昨年)悔しい思いをしたからこそ、今年1年しっかりやってこれた」と自信を持って、力強く言い切った。

本格的なランナー歴は、高校になってからだ。小3から野球を始め、小6時に選ばれた県選抜チームでは今秋ドラフト2位指名の日本ハム有薗直輝内野手(18=千葉学芸)とチームメートだった。中学時代は匝瑳(そうさ)シニア(千葉)でプレー。阪神及川雅貴投手(20)は、2学年上の先輩にあたる。山口は週4で野球に打ち込み、週2は中学の陸上部で汗を流していた。卒業後は県内有数の強豪校からの誘いもあり、野球を続けていく選択肢もあったが「野球は体がものをいうと思ったので、自分は陸上の方が可能性を感じました。学法石川を選んだことに間違いはなかったと思います」。松田和宏監督(47)の熱心な指導の下、東北を代表するランナーへ成長。恩返しへの思いも胸に刻み、3年間の集大成を示すつもりだ。

無限の可能性を秘める男には、どでかい夢がある。高校卒業後は早大への進学が決まっており、トラック競技に専念する決意を固めている。「トラックが好き。5000メートルで、まずは日本選手権に入賞して、将来的にはオリンピックに出場して入賞することが大きな目標です」と未来図を描いている。

悔しさを力に変え続けてきた山口が、3度目となる最後の師走の都大路を歓喜の笑顔で締めくくる。【佐藤究】