東京国際大のケニア人留学生イェゴン・ヴィンセント(4年)が、4区(20・9キロ、平塚中継所~小田原中継所)で8人抜きする激走で区間新記録を樹立した。速報値は59分59秒だったが公式記録は1時間ジャストとなった。20年の吉田祐也(青学大)1時間0分30秒を塗り替えた。

ヴィンセントは1年時の3区(21・4キロ=59分25秒)、2年時の2区(23・1キロ=1時間5分49秒)に続き、異なる3つの区間で新記録樹立という偉業を達成した。3区間の同時区間記録保持者は、東海大の佐藤悠基以来15年ぶり(1、3、7区)以来だが、往路だけならヴィンセントが史上初。3年時は左足を痛めた影響で2区5位に終わったが、最終学年で圧巻の走りを見せつけた。

今季は右ふくらはぎ負傷で今季の出雲、全日本を欠場。この箱根に間に合うかが焦点だった。当日変更で補欠からルカ・ムセンビ(4年)と交代する形で登場すると「絶対エース」は無敵だった。

トップの中大から2分44秒差の12番手でタスキを受けると、スタートからスピードを上げた。3・4キロ地点までに6人を抜き去り、6位へ浮上。5キロ付近では創価大の嶋津雄大(4年)をかわして7人抜き。10キロすぎで国学院大・藤本竜(4年)も飲み込み、同区間タイ記録となる8人のごぼう抜きとなった。

沿道のファンからの声援を力に快調に飛ばし、青学大、駒大、中大に続く4番手でタスキを往路最終5区につないだ。

レース後は日本語でインタビューに応じ「ありがとうございます。勇気持って走った。(箱根には)いい思い出がある」と話した。名実ともに「史上最強の留学生」となった。

◆ヴィンセント・イエゴン 2000年12月5日、ケニア生まれ。幼少期は軍人になることが夢だった。チェビルベルク中高から19年4月に「言葉と練習方法を学ぶため」来日。1年時は東京国際大史上最高の総合5位に貢献。2年時は相沢晃(東洋大→旭化成)の破られないと言われた区間記録を8秒更新し、大会MVPの金栗四三杯を留学生として初めて受賞した。1万メートルの自己最高は27分24秒42(21年)。昨年3月のパリハーフマラソンでは1時間1分18秒の自己ベストで2位。好きな和食は牛丼。愛称ヴィンちゃん。究極の目標は「世界平和」。経済学部。187センチ、68キロ。血液型AB。

<ヴィンセントの過去2度の区間新記録>

◆1年時VTR 19年度の3区(21・4キロ)で8番手から力強い走りで7人を抜いて首位に立った。59分25秒を記録し、前年に青学大・森田歩希(現GMOインターネットグループ)が出した1時間1分26秒の記録を2分1秒も更新。ハーフマラソン(21・0975キロ)に換算すると58分35秒前後で、当時の記録なら世界歴代5位相当だった。

◆2年時VTR 20年度の2区(23・1キロ)でトップと45秒差の14位でタスキを受けると、6・8キロ付近で2位グループの8人をわずか5秒、15歩で抜き去った。9・2キロでトップの東海大もかわして独走。歴代5位の14人抜き(関東学連含む)で、前年に東洋大・相沢晃(現旭化成)が樹立した記録を8秒塗り替える1時間5分49秒だった。

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