来年1月2、3日の第100回東京箱根間往復大学駅伝(箱根駅伝)で連合チームが編成されないことを受け、一部の学生や関係者の間では、関東学生陸上競技連盟(関東学連)の発表までの過程について疑問の声が上がっている。連合チーム編成の可否を巡る議論の場を設けるため、学生らはプロジェクトチームを立ち上げた。その一員として活動する東大大学院生が日刊スポーツの取材に応じ、臨時の代表委員総会(臨時総会)開催に向けて奔走していることを明かした。
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関東学連から第100回箱根駅伝で連合チームを編成しない案が加盟校へ提出されたのは、昨年4月19日だった。それを受け、東大の学生は同26日、連合チーム編成可否の最終決定の時期を問うメールを関東学連へ送信。しかし、学連側からの返答が得られないまま、同6月30日の代表委員総会(※1)で連合チームの編成可否が採決され、「関東学生連合チームは編成しない」と発表された。
今年4月に入り、東大や東工大を中心とした8つの大学は、22年6月の決定を覆すためのプロジェクトチームを結成。同19日から、加盟校の一部の大学や大学院に対し、オンラインでの集計ツールの「グーグルフォーム」を用いた署名活動を開始した。5月17日までに、関東学連規約の臨時総会の開催条件にあたる「代表委員(加盟校の代表者)の3分の1以上」の賛同票を獲得(※2)。6月1日、関東学連に対し、臨時総会開催の要望書を提出した。しかし同5日には、賛同した加盟校の数を大学/大学院および男女別で再集計するように求められたという。プロジェクトチームは同9日に再提出。その3日後に「臨時総会の方法を検討する」と連絡を受けたが、関東学連から同22日に再び連絡があり、臨時総会開催に賛同する加盟校の直筆の署名と押印をした書類を再提出するように指示を受けた。
そうした中、同28日の代表委員総会当日の午前、関東学連は加盟校に対し、10月14日の箱根駅伝予選会の要項を送付。午後の総会を経て、第100回大会で連合チームが編成されないことが公式ホームページ上で発表された。
プロジェクトチームは、臨時総会の開催を要求する中、今回の発表に至ったことに違和感を覚えた。その後も署名活動を続け、7月20日に臨時総会開催の要望書を再提出。同26日、ようやく開催を検討する旨の回答を得た。
25年1月の第101回大会での連合チームの編成可否は現時点で未定。学連内では、箱根駅伝に出場した経験を各大学に還元し、チームの強化につなげていくという当初の目的が薄れていると指摘する声もあり、先行きは不透明となっている。本紙は7月中旬、関東学連に対し、第100回大会で連合チームを編成しないことに至った経緯について取材を申し入れたが、学連からの回答はなかった。
■「議論の場が設けられなかった」
学生が不満をもらす理由は、連合チームの非編成の発表に至った過程に問題があると感じるためだ。東大大学院の学生は「より学生の意見が届きやすい体制にしてほしい」と訴える。今回の過程に関して、3つの問題があると指摘する。
1つ目は連合チームの編成可否を巡る議論の場が、十分に設けられなかったこと。関東学連の規約では、代表委員総会が開催される2週間前までに、会議の議事内容を通達する必要があると明記されている。しかし、昨年6月、今年6月ともに、会議の議事内容を示した資料は前日や当日の朝にしか送付されなかった。「各大学で十分に議論する時間がとれなかった」との声があがっている。
2つ目は承認/不承認の票数が議事録に明記されていないことだ。代表委員総会で採決をとる際はグーグルのオンラインフォームが用いられており、会議中に各加盟校の代表者が承認/不承認を送信する。その際、最終的な票数は明らかにされず、後日送付される議事録でも明示されていない。ある大学の監督は「どれだけの賛成、反対で決まったのかが公開されていない。少なくとも、議事録には絶対に必要」と指摘する。
3つ目は学生の意見が反映されにくい構造についてだ。臨時総会の開催を要求していたプロジェクトチームは、関東学連の代表委員総会の採決と同様、署名活動にはグーグルフォームを利用していた。しかし、1度目の提出から3週間以上が経過した後、関東学連から直筆の署名と押印がされた書面を再提出するように求められた。不正防止の意図があると理解しつつ「普段の会議でもオンラインフォームを利用しているので、票数を水増しできてしまうのでは」と違和感を覚える。また、連合チームを編成しない案は、上田誠仁委員長(山梨学院大陸上競技部顧問)らを中心とした駅伝対策委員会で話し合われたため、草案時に学生の意見は反映されなかった。
以上の点を問題視した上で、前出の学生は連合チームの存在を「希望の星」と表現する。「箱根駅伝にチームとして出場することが現実的ではない大学の選手にとって、連合チームは希望の星。そこに大きなモチベーションがあり、走力の強化やレベルアップにもつながっている」。連合チームでの出走へ向けて努力する過程では、自己管理や仲間との協調の大切さを学ぶことができると主張する。
「強豪校も本大会での活躍を目指して頑張っているように、その過程に人としての成長があることが大切。連合チームに出たいと思って頑張ることは悪いことではない」。今もプロジェクトチームは議論の場を求め、臨時総会の開催へ働きかけている。【藤塚大輔】
※1◆関東学連の代表委員総会 関東学連規約の第7章第45条にて、関東学連の「最高議決機関」とされ、毎年3月、6月に会長の招集によって開催される。事業計画や予算などのほか、規約・細則等の制定及び改廃や本連盟の重要事項について審議、決定、承認する。コロナ禍以降はオンラインで開催されており、承認の際はオンラインでの集計ツールのグーグルフォームによって採決される。なお、臨時の代表委員総会(臨時総会)は、加盟校の代表委員の3分の1以上の要望がある場合に招集される。
※2◆関東学連の加盟校数 23年度の加盟校数は244校。これは加盟する大学を、大学/大学院および男子/女子別に区分した数。臨時の代表委員総会(臨時総会)の開催要求には、加盟校の3分の1以上にあたる82校の賛同を得る必要がある。
◆箱根駅伝第100回大会 100回目を記念して全国の大学に門戸が開放される。来年1月2、3日に行われ、例年の20校から3校増の23校が出場する。すでに第99回大会で10位以内に入ったチームはシード権を得ており、全国からの出場を受け付ける10月14日の予選会(東京・立川)では、上位13校が本大会の出場権を手にする。予選会は日本テレビが地上波全国ネットで生中継する。ただし全国化は100回大会限りとなる見通し。
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