駒澤大が2時間7分51秒の大会新記録で2年連続5度目の出雲路Vを飾り、史上初の2年連続大学駅伝「3冠」へ盤石のスタートを切った。

6区の鈴木芽吹主将(4年)を筆頭に3人が区間賞を受賞。1区の篠原倖太朗(3年)がトップで2区にタスキを渡すと、その後も1度も首位を譲らずに完全優勝を果たした。絶対的エースが不在の中、厚みのある選手層で大学駅伝4連勝。

4月から就任した藤田敦史新監督のもと、偉業達成へ1歩を踏み出した。

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アンカーの鈴木には自信があった。

「4年間で一番良い状態。僕は絶対に負けない」

首位でタスキを受けると、2年連続区間賞の快走で応えた。「去年のチームを超える」のテーマのもと、大会新記録で優勝。「まずは記録で超えられた」と目を細めた。

同校初の3冠を達成した昨季。大学在学時から世界選手権に出場した田澤廉(現トヨタ自動車)がエースとしてチームをけん引する中、鈴木は故障に悩んでいた。

大学2年時に大腿(だいたい)骨を疲労骨折し、昨年も万全ではなかった。11月の全日本大学駅伝も欠場を余儀なくされた。

大八木弘明前監督から練習のペースを「抑えろ」と促されても走り続け、ケガを繰り返した。だからこそ「チームを俯瞰(ふかん)しながら、自分自身も俯瞰して見られるように」と主将を志願した。

視線をチームへと広げる中「自分がケガで離脱していたら、チームはまとまらない」と思い至った。夏合宿は朝から3回に分けた練習が組まれるが、3回目はあえて「絶対に走らない」と決めた。

「やらなきゃ」と追い込んだ時間を、補強トレーニングやエクササイズへ。今も本心は「やらなきゃ」だが、グッとこらえた。

藤田監督はその姿を見続けてきた。「今までは田澤に勝ちたくて無我夢中でやってケガをしていたが、ストップできるようになった」と信頼は深まっていった。

初采配となる今大会はオーダーに頭を悩ませたが、鈴木のアンカー起用は「揺るがなかった」。

その主将は大会前、地道に努力してきた自分と重ね合わせるように「焦らずにつないできてほしい。絶対に勝つから」とチームメートへ声をかけた。

その言葉に応え、5人全員が区間3位以内で1区から首位を独走。鈴木も1年前から21秒もタイムを縮めてみせた。人生初の胴上げは「ちょっと怖かったです。でも気持ち良かった」と格別だった。

大黒柱が不在-。そんな声も聞こえる中、決意も芽生えた。「エースの姿を目指していきたい」。

2年連続の3冠へ。駒大の輪の中心には鈴木がいる。【藤塚大輔】