フィギュアスケートの発展とともに世間の注目を集めてきたトリプルアクセル(3回転半)。女子では伊藤みどりが88年に初めて成功し、今年引退した浅田真央らによって引き継がれてきた。2回にわたって特集する「トリプルアクセルジャンパー」の第1回は、昨年9月のジュニアグランプリ(GP)スロベニア大会で女子7人目の成功者となった紀平梨花(15=関大KFSC)を取り上げる。


 今年2月12日、14歳だった紀平は国際スケート連盟(ISU)非公認のローカル大会「全大阪選手権」で、ひっそりと3連続ジャンプを跳んだ。トリプルアクセル(3回転半)-3回転トーループ-2回転トーループ。場内はどよめいた。

 昨年9月に女子世界7人目の成功者(ISU公認)となった3回転半は、すでに「いちかばちか」の域を通り越した。今月4日の西日本選手権フリーでは、浅田真央以来となる2本の3回転半に成功。18年平昌五輪に出場できる7月1日時点で満15歳という条件に、同21日生まれで3週間届かないが「自信につながる。これからも2本ずっと続けられるように練習を頑張りたい」とニッコリと笑う。

 現在も体脂肪率1桁という体は、幼少期からの鍛錬で出来上がった。1歳9カ月から通った兵庫・西宮市の広田幼稚園では跳び箱8段を跳び、逆立ちで園内を歩いた。バランス感覚が養われると同時に、転倒に対する恐怖心がなかった。手に切り傷をつくっても気にせず、そのまま風呂に入っても「全然なんともない」とケロリ。ジャンプ練習では周囲に「痛かったやろ?」と転倒を心配されても「うまいことこけてるから大丈夫!」と動じない。3回転半の練習では打ち身で体のあちらこちらが腫れたが、前向きに習得へこぎ着けた。

 今季の目標は全日本ジュニア選手権(23日開幕、前橋)ジュニアGPファイナル(12月、名古屋)世界ジュニア選手権(18年3月、ブルガリア)の3冠。「私は(22年)北京(五輪世代)だけれど、五輪シーズンの雰囲気を勉強したい」と誓う。浜田コーチは課題を「何でも平均的にできるけれど、後は度胸。ちょっと気が弱いから、大事な時に気持ちが引けてしまう」ところに挙げ、昨季本人が漏らした「カメラのカシャカシャっていう音が気になる」という大舞台で結果を求める。

 全日本ジュニア選手権で上位に入れば、ジュニアながら12月の全日本選手権(東京)への道も開ける。5年後を目指す現役3回転半ジャンパーは、日本の未来を作っていく。【松本航】

 ◆紀平梨花(きひら・りか)2002年(平14)7月21日、兵庫・西宮市生まれ。姉の影響で5歳からフィギュアを始める。15年全日本ノービス選手権では3回転5種7本を決め、ノービスA優勝。ジュニア1年目の昨季は全日本ジュニア選手権11位。今季は日本人選手で唯一、ジュニアGPファイナルへの進出が決定済み。50メートル走7秒8。趣味は映画、音楽鑑賞。153センチ。

紀平梨花(17年5月6日撮影)
紀平梨花(17年5月6日撮影)