先日、NTTドコモのイベントに参加してきた。“FutureExperiment.jp”観戦を変革せよという題目で、とても未来を感じるイベントだった。

 タイトルの他にコピーでは、

 「5G、高速大容量。それはサッカー観戦にどんな新体験を作り出せるか。例えばスタジアムから遠く離れた場所で。もし、試合中ピッチ全体を自由に見渡せたなら、何が見えてくるのだろう。もし、ピッチ上を走り回る選手の視点で観戦できたなら、何を感じるだろう。これは、docomoの、スポーツ観戦の未来を探す実験」

 NTTドコモでは、第5世代移動通信システム「5G」の商業化を2020年まで、目指している。そのテクノロジーを活用し、スポーツ分野での可能性を体験するイベントが今回行われたのだ。

 まさに、パブリックビューイングの新しいスタイルだろうか。

 今後の日本のスポーツ界の観戦者文化が変わるそんな気持ちが湧いてきた。私自身、スポーツ界にいる身としてもこの「観戦」というフィールドには、期待とアップデートの余地が多くあると感じていたし、とてもシンプルに興味の湧いたイベントだった。スポーツマネジメント、スポーツ社会学の概念では、観戦者の満足度調査は多く行われている。しかし、それはスタジアムの中だけの話だ。さらに研究者たちも興味をもつ観戦者文化の始まりなのではないか。

 トークイベントでは、元サッカーイタリア代表のデルピエロさん、つい最近まで現役選手だった、アンドレア・ピルロさん、元日本代表の福西崇史さんが登壇した。そのトークショーでは、そのスーパーレジェンド達と日本の元日本代表、Jリーガーのアスリート達がフットサルをした様子を会場から離れた場所で巨大なスクリーンにカメラワークもぜいたくに使ったオールピッチビューイングが参加したお客さんに披露された。まさにその場の現場にいるようなシチュエーションだった。

 テクノロジーの可能性を感じ感動していたが、やはりそのトークショーに会場はさらに湧いた。

 だって、あのデルピエロさんと、ピルロさんだ。

 数々の伝説を残し、世界の舞台で多くのタイトルも獲得している。なんと、デルピエロさんは、会計士の資格まで取得しているインテリジェンスを持ち合わせている。ピルロさんは、現在指導者の道に進もうとしているらしい。私たち世代は、2006年ドイツワールドカップが一番印象に残っているというか、知らない人はいないだろう。デルピエロさんの最も有名なハイライトシーンといえば、その2006年地元ドイツと対戦した準決勝ではないか。さらには決勝戦でもPK戦で4番目のキッカーとして成功させた。ユベントス退団後、そこから2シーズン私の第2の故郷とも呼ぶべきオーストラリアのシドニーFCで2年を過ごし、そのあと2014年に現役を引退して今にいたる。

 「小さいときからサッカーに触れてきた。サッカーをやることは自然の流れだった」

 サポーターとのブーイングや、国民の期待にどうやってプレッシャーを押しのけて現役を過ごしてきたのかという問いには、「負けたら、いろいろ批判されるが、批判されることは注目されている証し、そしていい結果を出したときには素晴らしい称賛があるのも知っている」

 批判も当たり前のことだそうだ。

 「全くネガティブではない」

 いざというときのベストな判断は、やはり練習だと話した。しっかりした準備をしないとその場で「本能」は発揮されない。

 最後に、人生にはビジョンが必要だと話していた。

 どんな人にも当てはまる言葉だった。

 偉大なことを成し遂げてきた人たちの話は説得力がある。私自身も自分のビジョンを改めて考えるきっかけになった。

 スポーツの役割は、いろんなところにちりばめてある。それを集めてアウトカムすることが大切なことだと感じた。

(伊藤華英=北京、ロンドン五輪競泳代表)

イベント会場で
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