4月14日~16日にかけて、中国(西安)にてワールドカップ(W杯)第1戦が行われた。

今大会に出場したのは2人の選手。日本のホープである玉井陸斗(JSS宝塚)と三上紗也可(日体大)だ。両選手は翼JAPANカップを終え、その足で中国へ出発した。2週連続での大きな大会への参加となり、とてもハードな日程だったが2人そろって銅メダルを獲得。大健闘で帰国した。

W杯で揃って銅メダルを獲得した玉井陸斗(左)と三上紗也可(翼ジャパン公式インスタグラムから)
W杯で揃って銅メダルを獲得した玉井陸斗(左)と三上紗也可(翼ジャパン公式インスタグラムから)

世界でも特にレベルの高い男子10メートル。玉井は予選を4位で通過した。続く決勝では2本目と4本目でのミスが響き、一時は6位まで順位を落とした。しかし、持ち前の粘り強さを活かしてラスト2本で見ごと挽回。終わってみれば4位との差はわずか0・9点でのメダル獲得だった。

トップレベルの熾烈な争いだったことがお分かり頂けるだろう。

W杯の1週間前に行われた翼ジャパンカップでは、私はジャッジをしながら玉井の演技を見ていた。その時の彼は、絶好調の時よりは少し消極的な演技に見えた。試合中に腰を押さえるようなそぶりも見せていたので、コンディションについても少し心配だった。

しかし、そんな心配は無用だった。W杯というとてもレベルの高い大会でも臆する事なく堂々と戦う姿には、貫禄すら感じた。最後まで諦めずに戦うところが彼の強さ。確実に実力が身についている。

574・40点というハイスコアで優勝したのはヤオ・ハン(中国)。ほとんどのジャッジが10点満点をつける圧巻の演技を何本も決め、周りとの差を見せつけた。6本の平均が95点という完成度の高さ。さすが飛び込み王国・中国である。

そして2位はオレクシー・セルダ(ウクライナ)。ヨーロッパ選手権の獲得者でもある彼は、玉井と同年代の17歳。今後もずっとライバルになる存在だ。

玉井は、5月に行われるW杯2戦目のカナダ大会にも出場予定。次戦でも実力者同士の新たな戦いが楽しみである。

そしてもう1人のメダリスト、三上紗也可。今大会では予選から3位を守り抜いての銅メダル獲得だった。

前回のコラムでも書いたが、彼女は翼JAPANカップの予選1本目で板に足をぶつけてしまった。あまりのショックで、試合後には自信をなくし涙を流していた。

しかし、今回はその経験が活かされたように感じた。少しの力みや緊張で動きが変わってしまう繊細な飛込み競技。思いがけない失敗により、自分のメンタルやフィジカルを学ぶキッカケになったはずだ。その新鮮な感覚のままW杯に臨めたことも今回の勝因の1つではないだろうか。

予選に比べ、決勝では小さなミスも見られたが、それでも3位の座を譲らずメダルを勝ち取った。

W杯で3位に入った三上紗也可の表彰式(翼ジャパン公式インスタグラムから)
W杯で3位に入った三上紗也可の表彰式(翼ジャパン公式インスタグラムから)

毎年この時期には、グランプリが開催されていた。しかし、2023年~25年は開催されない事が決まっている。そのため今年新たに始まったW杯。今回参加できる選手は「東京オリンピック」「2022ブダペスト世界選手権」「2022ヨーロッパ選手権」等で基準点を突破していることが参加条件。日本からは「2022ブダペスト世界選手権」に出場した選手しか登録出来ないことになっている。

さらに、第1戦(中国)と第2戦(カナダ)でランキングがつけられ、上位の選手が第3戦(ベルリン)に招待される仕組みだ。

今年は、緊張感あふれる世界大会が目白押しだ。引き続き、皆さんの温かいご声援をよろしくお願いします。

(中川真依=北京、ロンドン五輪飛び込み代表)