東京パラリンピックで日本中を沸かせた日本選手団が6日、解団した。金メダル13個、銀と銅を合わせて51個の成績は、16年リオの金0、計24個からメダル数で倍増した。河合純一団長は「強化を積み重ねてきた結果。12の競技からメダリストが出たことも大きな成果」と満足そうに話した。

桜井誠一副団長は、今大会の好結果を分析。(1)全競技にエントリーし、新種目のバドミントンで大量メダルを獲得(2)陸上の佐藤や道下、水泳の木村らリオで銀のベテラン勢の頑張り(3)水泳の山田や富田ら初出場組の活躍、と3つの要因をあげた。さらに、これをパリ大会につなげたいとした。

12年34→16年64、16年14→21年22。この数字は、パラ開催国が獲得した金メダル数と、次の大会で獲得した金メダルの数だ。12年にロンドン大会を開いた英国は地元で34個だった金をリオでは64個に倍増させた。ブラジルもリオデジャネイロ大会の14個から今回22個と増やした。

08年北京大会の中国は、94年アテネ大会から国別金メダル数で1位を続けているが、04年大会のギリシャは同じように地元で3個だった金を08年大会で5個にしている。

開催国がメダルを量産するのは五輪と同じ。球技などは予選免除だし、時差や気候の影響も少ない。好成績は当然でもある。ところが、パラの場合は開催国となった大会の「次」で、さらに躍進する。「ホームの利」が、4年遅れてやってくる。

パラリンピック発祥の国で、もともと障がい者スポーツが盛んな英国は、ロンドン大会でさらにその魅力が浸透した。パラのスター選手が生まれ、選手を取り巻く環境も変わった。それが、次のリオにつながったのだ。リオ大会後、ブラジルにはパラ専用の施設ができた。強化体制が整ったことが、東京大会に生きた。ともに大会の「レガシー」を好成績につなげた。

英国やブラジルのようになれば、日本は次のパリ大会で金メダル数を増やすだろう。さらにパラ競技の認知度が上がり、選手を志す子どもたちも増える。好循環が生まれる。ただ、それほど現状は甘くない。

選手団のマセソン美季副団長は「諸外国に比べて、日本は障がい者のスポーツ実施率が低い」と話し「アクセスが難しい」と説明した。障がい者がスポーツをしようとしても、できる場所が限られる。施設や指導者を整えることは急務だ。

「NTCイーストの増設が大きかった」と言って、桜井副団長は日本勢の好成績を喜んだ。もちろん、トップ選手の強化にNTC=ナショナルトレーニングセンターは必要だが、使えるのはパラを目指す選手だけ。パラスポーツを始めたい子どものための施設ではない。強化とともに普及も進めないと、土台から崩れる。それは、五輪も含めてどの競技も同じだ。

パラリンピックの場合、金メダルの数がすべてとは思わない。もちろん、アスリートが勝利を目指すのは五輪と同じ。ただ、クラス変更や障がいの進行など、メダル獲得への努力以外に成績を左右する要素が多すぎる。だからこそ、障がい者スポーツ全体のレベルアップが必要。競技人口を増やすことが重要になる。

認知度は上がった。次は障がい者スポーツへのアクセスをよくすること。新型コロナ禍で練習会や体験会が開けないのは仕方がないが、もっとパラ競技に触れる機会が増えればと思う。それが東京パラリンピックの「レガシー」になれば、次のパリ大会では今大会以上の金メダルを期待することができる。【荻島弘一】

東京パラリンピック団旗返還式で旗手の谷(左から2人目)と岩渕(同3人目)は河合団長に団旗を渡す。左は浦田副主将(代表撮影)
東京パラリンピック団旗返還式で旗手の谷(左から2人目)と岩渕(同3人目)は河合団長に団旗を渡す。左は浦田副主将(代表撮影)
東京パラリンピック日本選手団の河合団長(右から2人目)から団旗を受け取ったJPC鳥原光憲会長。左から旗手を務めた谷と岩渕、浦田副主将(代表撮影)
東京パラリンピック日本選手団の河合団長(右から2人目)から団旗を受け取ったJPC鳥原光憲会長。左から旗手を務めた谷と岩渕、浦田副主将(代表撮影)