先週のAIG全英女子オープンで黄金世代の1人、渋野日向子(20=RSK山陽放送)が、日本勢42年ぶりのメジャー勝利を果たした。

男子の大会取材が多い記者は、接する機会は多くはなかったが、一番驚かされたことは海外志向がないこと。全英女子オープンの優勝会見でもあらためて「海外に挑戦する気持ちはないですね」と答えていたが、その全英女子オープン出場の権利がかかった6月下旬のアース・モンダミン・カップの時も「(海外への思いは)私は全然、ないです。全英もここで賞金上位5人に入れば出られると聞いたので。聞くまではなんとも思っていなかったです」とさらりと話していた。

これまで、さまざまな競技に携わってきたが、「アスリート=海外挑戦」は当然の流れだと思っていた。単純に渋野や他の若い選手が、米ツアーで戦う姿を見たいと思うので、余計そう感じてしまったのかもしれないが…。高校卒業と同時に米ツアーに挑戦し、今年から日本ツアーに本格参戦している宮里美香(29=NTTぷらら)はアース・モンダミン・カップ時に「今の若い選手で米国に行きたいと思う選手はあまりいないですね」と話していたが、7月下旬のセンチュリー21レディースで初優勝した黄金世代の1つ下の世代、稲見萌寧(20=都築電気)も同じような質問に「ピンポイントで挑戦したいと思うことはあるけど、考えていない」と答えた。黄金世代の小祝さくらも海外への思いはないと言う。もちろん、米ツアーに挑戦している畑岡奈紗(20=森ビル)など海外に挑戦する選手はいる。が、若い選手は総じて「日本で」と話す選手が多い。

なぜだろう? 今の若い選手たちは、以前とは違いアマチュア時代から多くの大会に出場する機会がある。一定の条件をクリアすれば、国内ツアーはもちろん、アマチュアの世界大会だけでなく米ツアーへの出場もかなう時代になっている。実際、多くの若手がアマチュア時代から国内外の大会に出場してきた。

だからこそ、経験値が上がり、早くから結果を出せるのだとは思うが、その一方で自分のレベル、立ち位置が嫌が応でも分かってしまう。それを、痛感させられてきた世代でもある。簡単には「世界に」とは言えないんだな、と思う。渋野は「これからもっとレベルを上げて海外にも行ってみたいと思うかもしれない」と話し、稲見は「世界一になるにはまだまだ実力が足りていないので、今は日本で1番になることを目標にして、日本一を取り続けてから世界を考える」と胸の内を伝えた。

黄金世代は、華々しくゴルフ人生のスタートを切ったとはいえ、プロになってまだ1、2年。フィーバーに沸く中でも、「現在地」を自分なりの形で受け止めながら、しっかり地に足をつけ過酷なゴルフ人生を歩いている。スマイルの裏にしっかりとした覚悟と未来予想図が隠されているんだと思う。渋野をはじめ若い世代が、世界の舞台で戦っている姿をもっと、もっと見てみたいという思いはしばらく封印して、技術と自信をたずさえて「世界にいきます」と、宣言するその日を心待ちにしようと思う。【松末守司】

(ニッカンスポーツ・コム/スポーツコラム「We Love Sports」)