日本柔道最年長のオリンピアンの明るい人間性がにじみ出たワンシーンに出くわした。
20日に現役引退を報告した柔道男子73キロ級で2024年パリ五輪(オリンピック)銅メダリストの橋本壮市(34)が会見後、報道陣に「記念撮影」を呼びかけた。
会見を終え、一度は会場を出て行った橋本だったが、すぐにまた会見場に姿を見せた。すると、記者らにこんなお願いをしてきた。
「あの、よかったら、写真を撮りませんか? これまで取材してくれたみなさんとちょっと撮りたいなと…」
現役生活を終えたベテラン柔道家から最後に出たまさかのお願い。原稿の執筆作業や帰りの支度をしていた報道陣は橋本の気遣いに驚いた様子だった。
筆者は現在、柔道担当ではないが、前に勤めていた地方紙で東海大相模高-東海大出身でもある橋本を取材していた。稽古中も明るい表情で後輩選手と話せば、パリ五輪の代表内定後の取材ではこれまでの歩みを振り返り、涙を浮かべたシーンにも立ち会ってきた。
昨年は日本柔道最年長の五輪代表となり、銅メダルをつかんだ。
しかし、16年リオデジャネイロ、21年東京五輪はライバルの大野将平に競り負け、代表権を逃した。特に20年は世界ランキング1位になっても五輪代表に届かなかった。
栄光よりも挫折のストーリーがメディアに取り上げられることも少なくなかったはず。だが、橋本にとって酸いも甘いも自分にスポットライトを当て続けてくれたメディアの存在も彼の柔道人生を支えた「仲間」だと考えていたのかもしれない。
同日、橋本は自身のインスタグラムのストーリーズを更新。「これまでたくさんの取材に来てくださりありがとうございました!!」。会見に訪れた記者らと撮った集合写真を載せていた。
記者とアスリートの距離感は難しい時もある。それでも、最後に撮ったオフショットは、橋本の粋な計らいによるものだった。
こちらこそ、たくさんの取材を受けていただき、ありがとうございました。【泉光太郎】



