元阪神の鳥谷敬氏(41=日刊スポーツ評論家)がアスリートに迫る「鳥谷敬×パリ五輪の星」。第8弾では自転車BMXフリースタイル・パーク男子の中村輪夢(20=ウイングアーク1st)を直撃した。金メダル候補だった21年東京五輪は左かかと痛も影響し5位に終わったが、今年11月の世界選手権で日本人初優勝(※1)。「いつでも死ねてしまう」というリスクを背負いながら、第一人者が追い求める新境地とは-。【取材・構成=佐井陽介】

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中村輪夢には同志がいる。24年パリ五輪のブレイクダンス金メダル候補、シゲキックスこと半井(なからい)重幸だ。2人は関西出身で同学年。何年も前から親交が深く、「シゲちゃんとは真面目な話はしない」と冗談めかしつつ「互いに高めあう存在」だという。

中村は今、京都・宇治市の専用パークで練習している。縦43メートル、横29メートル、高さ12・7メートル。カメラ9台、センサー15台でジャンプの数値化も可能な練習場は、支援元のウイングアーク1stが総工費約4億円で建設してくれた。ただ、BMXの優勝賞金はW杯でもまだ100万円前後だという。

「米国でも億を稼ぐ選手はいない。もっとやりたいと思ってもらえるように、僕たちが稼げるところを見せないと」。誕生日はソルトレークシティー冬季五輪の開会式が行われた02年2月9日。父辰司さんが自転車の「リム」と「車輪で五輪の夢を」と名付けた祭典の申し子は、シゲキックスと同じく競技の未来も背負っている。

※1…今年11月9日から13日まで開催された世界選手権(アブダビ)のパーク男子で日本勢初優勝。決勝で新技の「720バースピン to タックノーハンド」を決め、93・80点をマークした。

◆BMXフリースタイル・パーク スピードを争うBMXレーシングと異なり、技を競うフリースタイル種目。高難度のトリックを組み合わせた1分間のランを2回行い、ジャッジによる採点で上位を採用する。

◆中村輪夢(なかむら・りむ)2002年(平14)2月9日、京都府生まれ。「輪夢」はBMXショップ経営の父辰司さんが自転車の「リム」と「車輪で五輪の夢」からつけた。2歳からBMXを始め、13歳で同世代の世界一に。19年はW杯最終戦で初優勝して年間王者。21年東京五輪は5位。22年9月には全日本選手権4連覇。同年11月の世界選手権で日本勢初優勝を飾った。環太平洋大の通信教育課程に在学中。170センチ、62キロ。

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