青木瀬令奈(29=フリー)からゴルフノートを見せられたのは、18年8月のニトリ・レディース第2日のことだった。「ゴルフは悪くないのに、なかなか結果が出ない」と悩んでいた青木が、コーチの勧めで同年4月から始めたものだった。

野球のメジャーリーグで大活躍する大谷翔平が高校時代につけていた「野球ノート」をまねた。9×9マスの81マスを9マスずつのブロックに分け、中心に目標、そのまわりに目標のためにすべきことを書き連ねた。

「賞金女王」のまわりには「メンタル」「体作り」「安定」「運」「人間性」「健康」「チーム」「技術」と書いた。「運」のまわりには「ごみ拾い」と書き、大谷をまねてゴルフ場で実践した。

青木瀬令奈が毎日つけているゴルフノート
青木瀬令奈が毎日つけているゴルフノート

あれから4年。21年のサントリー・レディースで2勝目を挙げ、7月3日最終日だった資生堂レディースで、最終組の首位スタートから初めての逃げ切り優勝を果たした。「人生を変えられた3勝目を挙げることができてうれしい」と大きな意味を持つ優勝を喜んだ。

ゴルフという競技は、技術や体力だけでなく、メンタルや運、人間性などさまざまな要素が絡みあって、優勝という成果につながる。ゴルフノートはいつしか「ざんげノート」と呼び方は変わったが、常に精神面も含め自分の状態や気持ちと向き合い、それを文字にして書き組むという作業をすることで、頭の中を整理し、次へ向かう力に変えていったのだと思う。

青木の会見は、自分で話すことがしっかり整理されて、記者の質問にも的確に、自分の言葉で話していた。ここ数年、20代前半や10代後半の若手選手の台頭が著しいが、取材していて思うのは、自分の頭の中がちゃんと整理できて話しているのかということだ。

囲み取材だけでなく、会見でもほとんどが話し言葉で、どこで切れるのかと思うぐらい、1つのセンテンスが長く意味がつかみにくい話をする選手も多い。

女子プロゴルフ協会でも新人研修で取材対応や、話し方などの対応を教えてはいるが、プロ選手として自分で学び実践していく必要があるだろう。

勝みなみや、西村優菜などノートをつけている選手の取材は、話の中身も整理されていて分かりやすい。ノート以外にもやり方があるかもしれないが、自分の気持ちを整理する、相手に自分の思いを正確に伝えるということは、SNSがこれだけ広まっている今、女子プロゴルファーにとって必要なスキルの1つになるのではないか。青木の会見を取材しながら思った。

【桝田朗】(ニッカンスポーツ・コム/ゴルフコラム「ピッチマーク」)

資生堂レディスオープン 青木瀬令奈(2022年7月3日)
資生堂レディスオープン 青木瀬令奈(2022年7月3日)