イ・ミニョン(30=韓国)の3年ぶり6度目の優勝で幕を閉じた北海道meijiカップは、国内ツアーで何十勝もしているベテランと無名の新人たちの熱いバトルで大いに盛り上がった大会だった。

大会を取材して感じたのは、キャディーの存在の大きさだった。最近、トラブルの方で有名になったが、問題を起こした人も含め、キャディーというのは、組んだ選手に勝たせるために、あらゆる事を考え、行動している大切な戦友だということだ。

大会第1日、7番までで3ボギーをたたき、9番から1イーグル、4バーディーで2位につけた上田桃子(36=ZOZO)。巻き返したきっかけは3、4年ぶりに組んだという東勝年キャディーの言葉だった。8番を終えた後に「ここ最近、こんな感じなの。らしくないね。外れてもいいから気持ち良くやってみたら」。パッティングで悩んでいた上田がこのひと言で、気持ちを切り替え、一気に上昇のきっかけをつかんだ。上田は「メンタル的にもそのひと言が大きかった」と振り返った。

優勝争いに顔を出しながら、なかなか勝ちきれない鈴木愛(28=セールスフォース)。第2日は1番から3連続ボギーと最悪のスタート。そんな鈴木は、ゲイリー・ジョンストン・キャディーから「土曜日のまだ3ホール目だよ」と声をかけられた。ここで鈴木は「今日は我慢の日だから我慢しよう」と切り替え「意外と冷静にゴルフができた」と心境を明かした。

グリーン上での結果に喜怒哀楽が出る鈴木だが、ジョンストン・キャディーは、1ホール終わると「次のホール行くぞ!」と明るく声をかけ、鈴木を終始リラックスさせていた。

18歳の最年少プロ、桜井心那は最終日も2番のダボから一気に盛り返した。最終的に1打差の2位。レギュラーツアー2戦目で大きな自信をつけた。キャディーを務めたのは2つ年上の兄・豪さん。中大ゴルフ部の2年生だ。最終日の2番パー3で桜井が、グリーン左の傾斜のある林の中にボールを打ち込んだ時は、誰よりも早くダッシュでボールを探しに向かった。ボールが見つかると、グリーン手前のフェアウエー上にボールを落とす位置を探し、コースとボールのある地点を行ったり来たり。精力的な動きで妹を支えた。そんな兄を桜井は「気を使わなくていいし、いつも通りやりやすかった」と話した。

最終日、あと1歩で優勝に届かなかった横峯さくら(36=エプソン)のキャディーは、夫の森川陽太郎さん。グリーン上で何度も話し合う姿が印象的だった。「ショットを打つときも私1人では決めていないですし、ラインは私は読めないので、夫に読んでもらっています」と全幅の信頼を寄せている。

キャディーとの戦い方は人それぞれだが、選手たちはキャディーという「安心」のもとで戦っている。ベテラン、新人、それぞれ技術の幅はあるが、選手を勝たせるキャディーは、控えめなアドバイスや、効果的な声がけ、たまにはジョークなどでどうやったら選手が気持ち良くプレーできるかを常に考えている。コース上で、キャディーと笑い合ったり、良くコミュニケーションをとっている選手は、ほとんどがいい成績を残している。【桝田朗】

meijiカップ最終日、フェアウエーを歩く横峯さくら(右)と森川森川陽太郎キャディー(22年8月7日撮影)
meijiカップ最終日、フェアウエーを歩く横峯さくら(右)と森川森川陽太郎キャディー(22年8月7日撮影)