98年度生まれ黄金世代の原英莉花(21=日本通運)が、日本最高峰トーナメントを制した。同世代の小祝さくらと同じ最終組で首位スタートし、11番からの3連続を含む5バーディー、1ボギーの68で通算16アンダーの272。小祝に4打差をつけツアー2勝目だ。過去プロテスト、QTに失敗した“雑草派”が、黄金世代では畑岡奈紗、渋野日向子に続く3人目の国内メジャー制覇で、3年シードも手にした。

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原の心に火がついた。「負けてらんないな」-。4打リードの11番パー4で、小祝が第2打をピン50センチにつけた。自分はピンまで105ヤード。ピッチングウエッジを手にアドレスに入ると、雑念が消えた。ボールはカップ右奥脇を刺し、スピンで1メートル戻った。数センチ違いでカップインしていたウルトラショット。バーディーにはバーディーだ。

「すごく難しいピン位置なのに“これは寄るな”と思った。どうせなら入っちゃえばよかったのに」。12番は5メートルを入れられ、3メートルを入れた。13番はパーの小祝に対し、カラーから10ヤードをチップイン。やられたら、やり返す。3連続バーディーで勝負の流れを引き寄せ、スタート前の4打差を守って逃げ切った。

雑草だった。「日本女子オープンは憧れの舞台でした。でも、中学の時、周りの友達は予選会に出たけど、私は2回諦めた」。神奈川・湘南学院高1年だった15年、予選会に初挑戦。「まぐれで通ったけど、本戦で“こんなところで勝てる日が来るの?”と思った」。そこから6年連続6度目の出場で頂点に立った。

勝、畑岡ら同学年が脚光を浴びたジュニア時代。「私は全然成績が出なくて」。初挑戦のプロテストも17年に最終まで進んだが、OB6発を打って撃沈、2打差で落ちた。

「みなみちゃんや奈紗ちゃんを、下から“すげ~な~”と見上げるばかりでした。でも、練習すれば、強い気持ちがあれば、と思ってやってきました」

雑草は強くなった。この日、6番で初ボギーを喫した。「ボギーが来て“楽しいな”と思った。何か気持ち悪いですよね? でも、ゴルフっぽいじゃないですか? あの時、何かビシッと来た。スイッチが入ったんです」と笑う。

雑草はひたすら、上を向く。昨季の初優勝後、師匠尾崎将司に「2勝目、2勝目だ」と念じられた呪文を、国内メジャー、しかも憧れ続けた舞台で解いた。次は何を目指すのか?

「常に上位にいる強い選手になりたい。常に上を見て、精いっぱい頑張りたい」。雑草は伸び続けるだけだ。【加藤裕一】

<原英莉花(はら・えりか)>

◆生まれ 1999年(平11)2月15日、横浜市生まれ。

◆ゴルフ歴 10歳から競技を始める。15歳の頃に尾崎将司の元を訪れ、その後に弟子入り。

◆雑草系 ナショナルチーム歴はなし。プロテストは18年夏に2度目で合格。17年にTP(トーナメントプレーヤー)単年登録制度でツアープロになったが、QTは最終前のサード落ち。18年は下部ツアー2勝、主催者推薦などでツアー出場を重ね、同年の賞金ランク38位(約2938万円)となり初の賞金シード奪取、LPGA敢闘賞に輝いた。

◆ツアー初優勝 昨年6月リゾートトラスト・レディース。同年賞金ランク14位(約7077万円)。

◆飛ばし屋 昨季のドライバー平均飛距離253・33ヤードで部門別ランク4位。

◆サイズ 173センチ、58キロ

<原英莉花の使用クラブ>

▼1W=ミズノプロ モデルE(シャフト=三菱 テンセイCK50 長さ46インチ、硬さX、ロフト8・5度)▼FW=ミズノ ST200(3W=15度、5W=17度)▼UT=キャロウェイ マーベリック 4U(20度、シャフト=IMIDE&SUNS)▼アイアン=ミズノ JPX921ホットメタル 5I~PW(シャフト=UTと同じ)▼ウエッジ=ミズノオリジナル(48、52、58度、シャフト=JUMBO333-03+)▼パター=オデッセイ トゥーロン SAN DIEGO▼ボール ブリヂストン ツアーB X