<高校ラグビー:光泉26-24日川>◇27日◇1回戦◇花園

 冬の花園がドラマチックに幕を開けた。光泉(滋賀)が、古豪・日川(山梨)を破り近畿勢1番星を挙げた。後半ロスタイムの相手GKがクロスバーに当たって外れる幸運な勝利で、2年ぶりの1回戦突破。

 命運の懸かったボールはクロスバーで跳ね、手前へと戻ってきた。後半ロスタイム。相手GKが外れ、その直後に勝利の笛が鳴る。奥へ跳ねていれば同点、抽選へともつれ込んでいた。劇的な幕切れに、光泉フィフティーンは一斉に両腕を突き上げた。

 「お客さんは楽しかったでしょうけど、やってる方はドキドキでしたよ。花園やなあ。(ボールが)こっちに跳ねてきたんですからね。相変わらず、花園ってすごいところですね」。92年度に伏見工FBで全国制覇した薬師寺利弥監督(37)も、聖地の不思議な力に苦笑した。

 2年ぶりの花園2勝目を引き寄せたのは、FB荒川だ。同点で迎えた後半27分。自陣ゴール前ラックから、右サイドを駆け抜けた。タックルに来た相手の胸へ、力強く左手を突いた。“必殺のハンドオフ”で3人、4人とかわしきり95メートルを独走。貴重な勝ち越しトライに「めっちゃうれしかった」と声を弾ませた。

 花園初勝利を挙げた2年前は、悪夢も味わった。1回戦直後に12人がノロウイルスに感染したため、2回戦を辞退。当時控えだった荒川は「僕たちが花園に出たら1回戦も2回戦も勝つ」と心に誓っていた。今年は殺菌スプレーを各自持参し、うがいも1日6回するなど対策は万全だ。

 昨年から伏見工OBのFWコーチを採用し、磨き上げたモールもチームの武器になっている。就任6年目の指揮官も「妥協しないメンバーがそろった。花園で勝つと伸び率も全然違う」と好感触だ。30日の2回戦はBシード四日市農芸(三重)が相手。初のシード校撃破で、2年前の無念を晴らす。【木村有三】

 ◆薬師寺利弥(やくしじ・としや)1974年(昭49)11月20日、京都市生まれ。92年度に伏見工FBとして同校2度目の全国制覇に貢献。日体大、東芝府中でも活躍。06年光泉ラグビー部創部とともに監督に就任。09年1回戦静岡聖光学院戦で監督として花園初勝利を挙げた。