<高校ラグビー:熊本西31-5磐城>◇28日◇1回戦◇花園

 トライを目指し続ける姿勢だけは崩さなかった。磐城(福島)は、熊本西の厳しいプレッシャーの前に、ミスを連発した。攻めこんでボールを失うこと10回。インゴールを陥れたのは1度だけだった。だが前を見つめ、必死に体をぶつけた。原発事故に苦しむ福島。CTB渡辺慧主将(3年)は「世間的に、福島に元気がないと思われるのが嫌だった。元気だということを証明したかった」と、涙で顔をくしゃくしゃにした。

 放射能の影響で、屋外での練習開始は5月だったが、渡辺主将は「その後に時間はあった」と言い訳はしなかった。これまでの積み重ねに悔いはない。坂本幸司監督(47)は「どんな状況でも、それを見て動くのがラグビー。今の福島もそうだと思う。やれることはやってきた。チャレンジできるものを作って、ここに戻ってきたい」と話し、聖地を後にした。