<世界柔道>◇25日◇女子63キロ級◇パリ・ベルシー体育館

 女子63キロ級の上野順恵(28=三井住友海上)が、3連覇を逃した。世界ランク1位の上野は、決勝で同2位のジブリズ・エマヌ(29=フランス)と対戦。延長の末の判定で0-3と敗れ、エマヌに3大会ぶりの王座奪回を許した。ロンドン五輪の金メダル候補が、今年1月のワールドマスターズ大会に続いてエマヌに苦杯を喫した。

 上野がぼうぜんと立ちつくした。圧倒的な相手への声援、アウェーの異様な雰囲気の中で延長を含めて8分間戦った。しかし、パワーのあるエマヌに積極的に技を仕掛けることができず。延長29秒には指導もとられた。園田監督が「アウェーでは(相手を)投げないと勝てない」と話した通り、旗3本は相手に上がった。

 託された望みを背負っていた。この日、日本勢は早い段階で次々に敗れた。それでも、上野だけは勝ち進んだ。2回戦で今年5月のアジア選手権準決勝で敗れた丁ダウン(韓国)に雪辱すると、3回戦ではキム・スギョン(北朝鮮)を圧倒。準々決勝、準決勝では延長を制した。勝ちたい気持ちが、上野の体を突き動かしていた。

 同部屋の佐藤が、前日の57キロ級で復活優勝を果たした。同じ旭川南高の主将と副主将。先に世界に出たのは佐藤だった。上野が追いついた時、親友は右ひざのケガで長期離脱していた。高校以来やっと一緒に世界大会に出た今回。「愛ちゃんが頑張っていると、自分も頑張らないとと思う」。しかし、あふれる気合も決勝戦では通じなかった。

 昨年の世界選手権で連覇を果たしたが、その後は結果が出なかった。ワールドマスターズ大会、アジア選手権と、女王らしくない試合が続いた。それでも、今年最大の目標とする大会で決勝まで来た。園田監督は「ここまで力を出し切れたのは来年につながる」と、銀メダルを評価した。

 連覇を遂げた昨年まで、お守りは食品保存用の小袋に封印して1度も出さなかった。しかし、今回は初めてカバンに下げた。「ジンクスに頼っていてはダメ。今年は今年だから」。精神的に成長した姿があった。3連覇は逃したが、上野がロンドン五輪の金メダル候補であることは変わらない。屈辱をバネに五輪の頂点へ、挑戦は続く。【今村健人】