ラグビーW杯イングランド大会が18日に開幕する。歴代日本代表において「史上最強」といわれるエディージャパンは、91年以来24年ぶりの勝利に終わらず、8強進出を目指す。躍進のカギを握る日本の武器を、5回に分けて紹介する。第2回は、日本歴代最多の94キャップを誇る大野均(37=東芝)。豊富な運動量を持ち味に「走れるロック」として、エディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ(HC)からの信頼は厚い。

 タックルしてはすぐに起き上がり、味方のサポートに走る。大野は192センチ、106キロの巨体だが、とにかく走る。チーム最年長の37歳。「レジェンド」と呼ばれる域に手が届きそうな大男は「まだ衰えは感じていない」。その運動量について、ジョーンズHCも「素晴らしい。お手本のような存在だ」とたたえた。

 今でこそ接点でぶつかり合うロックのイメージが強いが、もともと脚力自慢。日本代表デビューから約1年後、05年6月のアイルランド戦ではトライを決めに走るウイング(WTB)で途中出場。同年、速さと運動量が増す7人制の日本代表にも選出された。パワーと体力が必要なロックと、瞬発力とスピードが求められるWTBを代表レベルで掛け持ちした数少ない選手の1人だ。

 その原点は子供の時分にある。幼少期から農業を営む実家で、わら運びを手伝った。自家製の牛乳が水代わりだ。高校時代は野球部の朝練習前に、午前5時から新聞配達に出て走った。インフルエンザにかかっても休まなかった。真面目な性格も手伝い、しゃにむに走る大野のスタイルは、自然と出来上がった。

 自他ともに認める超遅咲き。不器用だから人より多く走る-。その信念がプレーの源となる。今夏の宮崎合宿でも一切、妥協はせず「代表に残るために必死です」と練習に取り組んだ。同じロックで代表候補だった24歳の宇佐美和彦(キヤノン)は「常に全力で走っている。大野さんがあれだけやっているなら自分も相当やらないといけない」と尊敬のまなざしを向けた。

 泉のようにあふれ出る運動量に、ボール争奪の最前線に飛びこむスピードは、エディージャパンの武器となる。歴代最多94キャップを積み上げた脚力で、世界の強豪に挑む。【岡崎悠利】

 ◆大野均(おおの・ひとし)1978年(昭53)5月6日、福島県郡山市生まれ。清陵情報高までは野球部で外野手。郡山市にある日大工学部に入学後、先輩から半ば強引に勧誘され、ラグビーを始める。トップリーグの東芝に所属し、15年目。好きな言葉は「灰になってもまだ燃える」。192センチ、106キロ。