ラグビー界のスーパースターが現役ラストゲームに向かう。トップリーグの神戸製鋼は12日、14日の最終節サントリー戦(ノエスタ)の出場メンバーを発表。背番号22で途中出場が濃厚な元南アフリカ代表CTBジャック・フーリー(33)はあらためて同戦での現役引退を表明し、現在の思いを熱く語った。

 約1時間の調整を終えると、フーリーはいつもと変わらぬ笑顔でグラウンドを引き揚げた。「コンシュウガ、ワタシノ、サイゴノゲームデス」。日本語でそう切り出すと「シーズンの始めから頭の片隅に(引退が)あった。夏合宿から帰ってきたときに、リカバリー(疲れを取る)の速度が遅かった。そのタイミングで決めました」と現役引退の決断を振り返った。

 南アフリカ代表キャップは72。「思い出はたくさんあるけれど、07年のW杯(フランス大会)で優勝したことかな」。そんな世界的スターは2度目の出場となった11年W杯を経て、同年パナソニックへとやって来た。「日本に来る心配? 全くなかったよ。欧州からも誘われていたけれど、全く違う経験がしたかったんだ」。12年には神戸製鋼へ移籍。13年度は17トライでリーグ最多トライに輝いた。「日本に来るときから『最後をここで終えることになるだろう』と思っていたよ」。異国で現役引退することを、さも当然とばかりに笑った。

 今季は6試合に出場。ケガもあり途中出場が多かったが、フーリーが仲間に出す大声での指示はいつもスタンドまで響き渡った。「いいことか、悪いことかは分からないけれど、小学校のころから意識しているんだ。試合中のコミュニケーションは大事だからね」。南アフリカ代表のテストマッチであろうと、日本であろうと、そのスタイルを変えることはしなかった。

 現在は家族を日本に呼び寄せ、生活を送っている。「日本人選手と友達になれたことが良かった。ラグビーをしていると、どこでも友達を作れるからね。後は食べ物も大好きだった。カツ丼、唐揚げ、焼き肉…」。引退後は南アフリカに戻り、1年間を家族や友人と過ごすリフレッシュ期間に充てるという。その上で「コーチングの経験を積みたい。もしかしたら数年後に、神戸に戻ってきているかもね」と愛着を口にした。

 チームは今季の4位が既に確定。日本選手権も逃したが、フーリーの心はぶれない。

 「チームファースト。一番はチームが勝つことを、ファンのみなさんに見てほしい。自分の最後の試合という意味でも、サントリーに勝つことが一番のプレゼントになると思っているよ」

 最終節、最大の注目はサントリーの4季ぶり優勝になる。だが、それを拒む男の奮闘にも目を離せない。