4種目で今季世界最高記録が誕生した。女子5000メートルはヘレン・オビリ(27=ケニア)が14分18秒37、女子棒高跳びはエカテリーニ・ステファニディ(27=ギリシャ)が4メートル85と、ともに記録的な期待度では上と見られていたライバルを破った。

 リオ五輪銀メダリストのオビリは前半、1500メートル世界記録保持者のゲンゼベ・ディババ(26=エチオピア)が引っ張る4人の集団でレースを進めていた。

「ゲンゼベが積極的に前に行くと予想していました。でも、彼女がそれができなくなったら、自分で行こうと思っていたのです」

 3000メートルで前に出たオビリは、3400メートルまでの1周で2位以下に30メートルの差をつけると、世界歴代5位の好タイムでフィニッシュした。

 レース前はディババの、姉のティルネシュ・ディババ(31=エチオピア)の持つ世界記録・14分11秒15への挑戦が注目されていたが、オビリは「誰も私を破ることなんかできない」と自身に言い聞かせてレースに臨んだという。

 女子棒高跳びのステファニディは4メートル85にただ1人成功。5月にサンディ・モリス(24=米国)がマークした4メートル84の今季世界最高を1センチ上回った。

 ステファニディの武器は安定した跳躍。自己記録は昨年6月にマークした4メートル86だが、金メダリストとなったリオ五輪、今大会と自己記録とほぼ同じ4メートル85を跳び続けている。

 それに対してモリスは昨年5メートル00の世界歴代2位を跳んでいるが、今大会は4メートル55で6位。自己記録との差が大きい試合が多く、今回は最初の高さの4メートル40も1回失敗している。不安定さを克服しないと、主要大会での勝率は低くなってしまう。

 優勝を決めたステファニディはバーを5メートル07の世界新記録に上げたが、この高さは3回とも失敗。「怖さも少し感じましたが、3回目は自分のベストの跳躍ができたと思います」と、記録への意欲も強く持っている。

 ローマ大会は4つの今季世界最高のうち中・長距離種目が3つを占め、短距離・ハードル種目に好記録は誕生しなかった。

 そのなかでは110メートル障害世界記録保持者で、近年は故障の影響で低迷していたアリエス・メリット(31=米国)が13秒13で優勝。自身の世界記録12秒80との開きはまだあるものの、リオ五輪銀メダリストのオルランド・オルテガ(25=スペイン)に勝って復調をアピールした。

 桐生祥秀(東洋大)が出場した男子100メートルも、優勝したチジンドゥ・ウジャ(23=英国)ですら10秒02(向かい風0・2メートル)と、9秒台は出なかった。桐生は9秒8~9台の記録を持つ選手が7人出場したなかで10秒18の6位だった。

◆今季の女子5000メートル

 2戦行われたダイヤモンドリーグは上海大会(5月13日)、ローマ大会とオビリが連勝。記録的にもその2大会のオビリが、今季の世界1位と2位を占めている。ダイヤモンドリーグ・ユージーン大会でディババがマークした14分25秒22が今季世界3位(この大会の女子5000メートルはダイヤモンドリーグ得点対象外種目)。

 8月のロンドン世界陸上はこの2人に、昨年のリオ五輪金メダリストのビビアン・チェルイヨット(33=ケニア)、1万メートル世界記録保持者のアルマズ・アヤナ(25=エチオピア)が加わった激戦が予想される。