パワハラ騒動で体調を崩して今大会不参加の栄和人強化本部長(57)の長女、65キロ級の希和(24=ジェイテクト)がチームの勝利に貢献した。初戦のスウェーデン戦に起用され、ニーグリアン・ムーアに4-2で逆転勝ち。「いろいろある中で勝てて、ホッとしました」と振り返った。

 昨年12月の全日本選手権1、2位を中心に構成された今大会のメンバー。同選手権5位で代表入りしていた栄は至学館大出で、本部長の娘でもあったために一部でパワハラとの関連性を報じられた。大会1週間前には、日本協会副会長でもある至学館大の谷岡郁子学長に代表辞退を相談していたた。

 「出て勝つことが最高だと思った」と出場に踏み切ったが、重圧は相当だったはず。「代表として出るからには、勝たなければいけない」という使命感でマットに上がったが「頭は真っ白、体は動かなかった」。それでも、父から体で教わったレスリングを発揮して逆転勝利。至学館大コーチでもあるセコンドの志土地翔太コーチに迎えられると緊張が一気に緩んだ。そのまま座り込んで号泣。両手で顔を覆い、しばらく動くこともできなかった。

 母は元世界女王の坂本涼子さん。両親の離婚後は母のもと大阪で暮らしていたが「強くなりたい」と自ら希望して父の教えを受けるべく至学館高に入学。それまで坂本姓だったが、栄姓に戻した。「たくさんアドバイスをいただいたし、私のことを一番知っているのは父」と話し、不在についても「心細いし、寂しい」と本音を明かした。

 騒動を扱うテレビや新聞は「なるべく見ないようにしているけれど、入ってくることもある」とつらそうに話した。それでも日本代表に選ばれれば、チームの勝利が一番。「決勝戦はサポートになると思うが、優勝するために貢献したい」と話していた。