全米オープンを制した世界6位の大坂なおみ(20=日清食品)が、号泣の4強進出だ。第1セット0-3から泣き始め、第2セット後半まで、コート上でも泣き続けながら、同45位の張帥(中国)に3-6、6-4、7-5の2時間33分で逆転勝ち。日本女子最多の年間ツアー3勝目に残り2勝と迫った。また、この1勝で、今季のハードコートの勝ち星を29勝とし、サバレンカ(ベラルーシ)に次ぐ2位となった。

何が何だか分からない。頭の中がパニックで、涙が出続けた。サーブが入らず、ストロークもミスが連続し、調子が上がらず。わずか0-3でバイン・コーチがアドバイスに入った。そこでもう涙があふれた。「どうして調子が悪いか分からないの」。そこから涙が流れ続けた。

サーブでトスを上げれば、涙がほおをぬらした。サーブを打ち終わると、右手首に巻いたリストバンドで涙をぬぐった。泣きながらのプレーなど前代未聞だ。第1セットを落とし、第2セットも0-2。心は完全に崩壊した。

しかし、そこからやけっぱちのショットで、盛り返した。相手に主役は渡さない。決定打もミスも、主役は大坂。以前の我慢を知らない大坂に逆戻りで、イチかバチかのショットを繰り広げる大坂劇場。ただ、それで相手に恐怖を与え、ミスを引き出し、第2セットは奪った。

最終セットが始まる前に、またバイン・コーチがアドバイスに入った。

「君が頑張るところを見てみたい」

大坂は「でもできないわ」。

バインは「やればできるよ、なおみなら」。

気持ちが折れるのを必死に耐える。しかし、ラケットを投げ捨て、天を仰ぎ、1-4まで追い込まれた。また涙だ。足は止まり、やる気が一気に落ちた。そして、また開き直った。少しずつゲームがつまり、また相手が恐れを感じた。ダブルフォールトに助けられながら、大坂劇場が逆転の末に幕引きだ。

コート上でのインタビューで、つい「こんな試合をして、相手に悪いと思っている。ストレスかけてごめんね」と、相手に謝った。ただ、泣こうがわめこうが、勝ちは勝ちだ。今季、第1セットを奪ったときの勝敗は41戦無敗。第1セットを落としたときは1勝16敗だった。泣き叫んだ結果が、今季わずか2度目の逆転劇を、大事な試合で導いた。