女子の長岡商(新潟)は、初戦の2回戦で橘(神奈川)と対戦。フルセットの末、1-2で負けた。セットカウント0-1から第2セットを奪い並んだが、最後は力尽きた。昨年8月の全国高校総体(インターハイ)でフルセットで敗れている相手との全国大会での再戦となったが、リベンジはならなかった。

相手が放ったウイニング・ショットに長岡商の誰もが触ることができなかった。左サイドラインとエンドラインが交わる味方陣の奥深くでボールは弾んだ。夏に続き「春高」も、同じ相手にフルセット負け。コートを引き揚げるメンバーは悔し涙を浮かべたが、佐藤淳司監督(43)は言い切った。「『1年間で最高のバレーをしてこい』と送り出した。ベストゲームと言いたい」。コート上の選手たちは、約束事の「楽しむ」を実践。ピンチにも、笑顔だけは失わなかった。

橘とは昨年8月のインターハイで対戦しているだけに、対策は練ってきた。高さのある相手スパイクには、ブロックのタイミングを遅らせてワンタッチ。ボールのスピードを削って、レシーブから攻撃につなげた。セットカウント1-1で迎えた第3セットはポイント14-25と大差がついたが、反撃を諦める選手は1人もいなかった。リベロの堀之内彩美主将(3年)は「目の前の1点、1点に集中して楽しんだ」と話した。

長岡商選手たちの左手甲には「素人」。右手には笑顔のマークがフェルトペンで記されていた。「この大会に出場している、どの選手より、私たちは中学の実績はない。素人の気持ちでチャレンジする、という意味を込めた」と堀之内主将が説明する。夏と同じくフルセット負けも、“素人の挑戦”は夏よりも中身が詰まっていた。「楽しむという約束の中で勝負する、という精神を貫いていた。成長を感じた」。負けはしたが佐藤監督は選手たちの奮闘をほめていた。【涌井幹雄】