ジュニア世界9位で、16歳の望月慎太郎(Team YUKA)が、4大大会ジュニア男子シングルスで、日本男子初の決勝に進出した。同6位のマーティン・ダム(米国)に6-1、0-6、10-8で勝ち、1時間59分の激戦を制した。

壮絶な戦いだった。最後、相手のバックがネットした瞬間、望月は「カモーン!」としゃがみ込み、立ち上がると、何度も右手でガッツポーズを振り回した。日本男子初の快挙が達成された瞬間だが、「やったーという感じ」と、少し喜びを見せた以外は、「1つの大会、1試合を100%で戦っているだけ」とあくまで冷静だ。

6月の全仏では、同大会のジュニア男子シングルスで日本男子初のベスト4。06年ベスト8だった錦織圭越えを果たした。そして、今回の史上初の快挙。その好調さの裏側には、ちょっとした荒療治があった。

今年の第1戦は、コスタリカで単複優勝するなど、絶好の滑り出しだった。しかし、その後の南米で、少しスランプになった。錦織を支援し、望月も援助を受ける盛田テニス基金の専属コーチで、IMGアカデミーで望月を指導する山中夏雄コーチ(45)は、望月の性格を「マイペースなくそまじめ」と称する。

試合も、練習も、トレーニングも全力投球。それは「決して悪いことではない」。ただ、175センチ、64キロの体格では、それを続けると、どこかで破綻してしまう。「どこにくそまじめを持って行くのか」。4月下旬から、6月の全仏まで、異例の6大会連続長期遠征を組んだ。

その期間は、なるべく試合前の練習はしないで、「くそまじめさ」を試合に集中させる荒療治だった。その効果が、全仏の4強で大きく花を開いた。その成績で、望月は「大きな自信になった。やれる手応えを感じた」。

今大会の前哨戦で、6月下旬に、英ノッティンガムの大会で自身初めて芝での大会に参戦した。「最初は心配だった」(望月)。練習試合でも負け続けた。しかし、本番になると、あれよあれよと勝ち上がり、芝の初めての大会で優勝。山中コーチは「ヒントを与えるとすぐに吸収できる。錦織とよく似ている」と話す。

13歳で、盛田テニス基金の援助を受けIMG留学したのは、錦織と全く同じ歩みだ。そして、ジュニアの成績では完全に錦織を超えた。4大大会ジュニアのシングルスで、優勝した日本人は、69年全仏、ウィンブルドンを制した沢松(現姓吉田)和子しかいない。決勝は、14日の最終日に行われる。

 

◆ウィンブルドンは、WOWOWで7月1日~14日、連日生中継。WOWOWメンバーズオンデマンドでも配信。