【ニューヨーク=吉松忠弘】世界1位の大坂なおみ(21=日清食品)が、2連覇に向け一歩を踏み出した。フォアの縦回転をかけた球を使うなど、新たなプレースタイルで同84位のアンナ・ブリンコワ(ロシア)に6-4、6-7、6-2の2時間28分でフルセット勝ち。2回戦は、同53位のリネッテ(ポーランド)と対戦する。対戦成績は1勝1敗。

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何度も「カモーン!」と自分を奮い立たせた。結果的には44本の決定打に対し、50本の凡ミスを量産したが、大坂は最後まで明るく笑顔だった。

心を乱すことなく、冷静に試合を運んだ。「最初からタフな試合は覚悟していた。マッチポイントを奪うことだけ考えていた」。

スコア上は接戦だ。しかし、これまでの意味がない凡ミスの量産とは違った。持ち味のパワーで相手を打ち負かすプレーは、安定と展開でポイントを奪えるプレーに変貌を遂げようとしている。勝利よりも、新たな自分のスタイルを生み出すための苦しみだった。

フォアハンドは球に縦回転をかけ、ネットの高いところを飛ばすショットと、武器の直線的なパワーショットを組み合わせた。また、縦回転のフォアを鋭角に打ち、相手を外に追い出し、空いたコートをつくる戦略として使用した。

その選択に迷ったり、技術的にうまく働かず、ミスも生まれた。しかし、これまでのように「ヒートアップしちゃうと、必要もない強打をしちゃう」ことはない。「それを克服できている」ことで、盤石なテニスが生まれようとしている。 最大の変化は、相手の第2サーブに対するリターンの立ち位置だ。従来なら、ネット寄りでサービスラインに近いところに立った。この日はベースライン上か、そこから半歩内側。バウンドする位置から、やや遠めに立ち、しっかりと球種やコースを見極め、返球することを心がけた。

間違いなく、次への高みに向け、ステップアップを始めた。日本協会で大坂を担当する吉川真司女子代表コーチは「自分がプレーする方向性が、ようやく固まってきた」と話す。変化する過渡期に、負けることはあるかもしれない。それを乗り越えた時、その強さは揺るぎないものになる。

◆WOWOW放送予定 29日午前7時55分から。30日午前0時から。ともにWOWOWライブ。男女シングルス2回戦ほか。生中継。