全日本選手権2年連続3位で、今年3月の世界選手権（ストックホルム）代表に決まっている鍵山優真（17＝星槎国際横浜2年）が音響トラブルに見舞われ、減点された。

最後のトリプルアクセル（3回転半）を跳ぶ前に、SP曲「Vocussion」がプツリ。驚きながらも成功させたが、その後もステップ、スピンの際に計3度、音楽が止まった。

この結果、演技に影響が出て、終了した時間が2分57秒に。SPは2分40秒＋10秒の2分50秒までに終わらせなければいけない。オーバータイムは5秒ごとにマイナス1点。7秒オーバーのため2点が引かれた。

日本スケート連盟の伊東秀仁フィギュア委員長によると、曲が止まった時点か演技終了直後にジャッジへ選手から申告する必要がある。そうしないと、ジャッジも救済措置を判断できない。原因が会場の音響機器トラブルであっても、だ。

鍵山本人も「曲が止まった時点で行かなければいけなかった」と反省。同じビッグハットで行われた全国中学校大会でも同様のケースがあったそうで「中学2年の時だったんですけど、同じように止まって。その時も（審判のところへ）行かなかった。また同じことをしてしまった」と苦笑いした。

最初に音楽が途切れた3回転半に関しては「ビックリしたけど集中できた」と美しく決めた。「一瞬の出来事で考える余裕がなく、でも練習で何度も跳んでいたので体が覚えていた」と無心だったことが奏功したようだ。その後の2回も、少し止まってから曲が再開されたこともあり、判断が難しかった。「流れてくれ～」「流れろ、流れろ」と思いながら演技を続行し、結果的に7秒オーバー。「2点の減点がなければ90点を超えていた。悔しいけど悔しくないような」と不思議なコメントになった。

実際に88・91点で首位発進。4回転ジャンプが跳べないジュニアルールでは異例の高得点だ。国際スケート連盟（ISU）非公認で比較はできないものの、昨年3月の世界ジュニア選手権で鍵山が首位発進した時の85・82点を上回った。

羽生結弦、宇野昌磨に次ぐ3位だった全日本選手権の後は「ステップやターンを細かく確認してきた。レベルが安定していなかったので、何回も曲をかけて」猛練習してきたという。結果として、4回転ジャンプがなくても、減点があってもハイスコア。スケーティングのさらなる進化が評価されるはずが、まさかのアクシデントで注目されてしまったが、鍵山にとって初のインターハイは今後への教訓となる一夜になった。【木下淳】