交換しました…。名古屋市の河村たかし市長(72)がソフトボール日本代表後藤希友(20=トヨタ自動車)の金メダルをかじった問題で、日本オリンピック委員会(JOC)の山下泰裕会長(64)は4日、8月に金メダルを交換したことを明かした。JOCを通じて新しいメダルが後藤に届けられた。同市長からの金銭負担の申し出は断った。コロナ禍で、選手への敬意を欠く行為が騒動に発展したが、ひと区切りとなった。

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騒動は、ひっそりと終結していた。河村市長ががぶりとかじった後藤の金メダル。山下会長は「8月中には交換しています。すぐに(交換を)手配した人がいました。(河村市長に)お金は発生していません」と明かした。JOCは、かじられたメダルを回収して、新しい金メダルを後藤に届けた。山下会長は「本人に(騒動を)大きくしてほしくないという気持ちがありました」と説明した。

海外にも打電された仰天行動だった。同市長は8月4日、後藤の表敬訪問を受けた。金メダルをかけてもらった際、許可をとらずにマスクを外してメダルをがぶり。コロナ禍で、選手へのリスペクトを欠く非常識な行動に、批判が殺到した。同12日に東京オリンピック(五輪)・パラリンピック組織委員会が「IOCのサポートで後藤選手のメダルが新しいものと交換する運びとなりました」。その言葉通りにすみやかに実行していた。

河村市長は、原材料費が最低でも5万4000円の金メダルについて「交換費用は個人で支払いたい」としていたが、却下された。JOCは「五輪憲章で政治的な寄付は受け入れられない」と回答。組織委は交換費用について「IOCの負担」としていた。そもそも五輪メダルはアスリートの努力の結晶であり、お金を払えばいい、というものではない。山下会長は「河村さんは反省なされていて、メダルも交換した。これで話は終わりです」とした。

◆がぶり事件 ソフトボール日本代表で金メダルを獲得した後藤が8月4日に名古屋市役所を表敬訪問した際に発生した。後藤からメダルを首に掛けてもらった同市長は手に取り「重たいな」とつぶやくと了承を得ずにマスクを外して、いきなりメダルをがぶり。所属するトヨタ自動車は「あるまじき行為」と批判、18年平昌五輪金メダルのスピードスケート小平奈緒は「私だったらその場で号泣してしばらく立ち直れないかも…」。組織委は「コメントはありません」と繰り返し、強い怒りをにじませた。同市長は、JOC山下会長から電話で「指導を受けた」。同市長は同16日に3カ月の給料計150万円を全額カットする処分を自身に科した。20日までに市には1万5000件近くの抗議や苦情が殺到。同市長はイベント出席を見送るなど、公務に支障が出た。