世界ランキング10位の日本が、ワールドカップ(W杯)2度の優勝を誇る同3位のオーストラリアを土俵際まで追い詰めた。19年W杯日本大会以来、約2年ぶりに国内で行われたテストマッチで23-32と健闘した。

逆転勝利を目指し、後半34分には途中出場したSO田村優(32=横浜)のPGで4点差。6度目の対戦で初の金星まで、あと1歩だった。23年W杯フランス大会へ。前回大会の8強超えへ手応えをつかみ、11月の欧州遠征へ向かう。

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引き分けは求めていなかった。7点を追う後半34分。ゴールまで約45メートルのペナルティーで、日本はPGを選んだ。陣地を前に進める選択をせず、SO田村が右足を振り抜いた。低い弾道でPGを決め、場内の手拍子に背中を押された。あと4点-。あの15年W杯南アフリカ戦最終盤。引き分け狙いを拒み、白星を信じたスクラムが歴史的勝利につながった。また1トライで金星の状況に持ち込んだ。

分岐点はスクラムだった。7点差に迫った後半19分、かつての日本が苦汁を味わってきた相手を自陣で押し込んだ。プロップの具がほえ、新主将のラブスカフニは「ゲームの中で1つになっているのを感じた」。最大14点差がついた4分後、新副将のCTB中村がインターセプトからトライし、窮地を救っていた。4点を追う終盤には、自陣で試合前日に登録されたフランカー徳永が体を当てながらボール奪取。故障した大黒柱リーチの代役だった。死力を尽くしたからこそ、後半38分にモールで許したトライが悔しかった。プロップ稲垣が思いを代弁した。

「負けたことをしっかり受け止めている。勝つために準備してきたので、いいゲームではなかったと思う。選手全員が思っている」

相手は直近の南半球4カ国対抗で、19年W杯優勝の南アフリカに2連勝。本気だった。序盤のスクラムは劣勢に陥り、計14個の反則で自滅もした。昨季は新型コロナウイルスの影響で代表活動がなく、実戦不足は否めない。だが、南半球有数の世界的強豪に、たくましき日本は引かなかった。

11月の欧州遠征ではアイルランド、スコットランドを含む3連戦を控える。19年W杯では両国に勝利。過去最高8強超えを目指す23年W杯へ、もう善戦で満足できない。稲垣は誓った。

「最低でも(反則数を)1桁に抑えないと難しい。シンプルな問題ですが、そのシンプルな問題が故に負けている。もっと規律への意識を、選手全員にすり込んでいかないといけない」

そのまなざしは、未来に向いている。【松本航】