2大会連続のオリンピック(五輪)出場を目指す坂本花織(21=シスメックス)が、日本勢最高の4位で開幕戦を終えた。

今季まだノーミスのない新フリー「No More Fight Left In Me/Tris」。海外ドキュメンタリー映画の音楽で「難しい」とここまで苦戦してきたが、冒頭のダブルアクセル(2回転半)から順調にジャンプを決めていき、最後に代名詞の3回転ループを成功。「危なくて『あ、やべ!』と思って笑っちゃいました」と振り返りながらも決めて、演技を終えると、まさに満面の笑みで何度もガッツポーズ。はしゃいで跳びはねるようにリンクを出る姿に米国のファンから大きな拍手と歓声が上がった。

中野園子コーチからも「よくやったー!」と頭をポンポン。フリー全体3位の144・77点がアナウンスされると小さく拍手して喜んだが、合計215・93点で暫定2位(最終的に4位)と画面表示されると、惜しむように手をたたいた。

それでも、苦しんできたフリーのほぼノーミスには満足だ。自己採点は「75点!」としたものの「すごくうれしいです」。非公式の練習中に「ちょっとずつコツをつかんできていた」といい「やっとできてホッとしています。後半、途中の曲が変わるあたりからしんどくなってしまうので、どうリラックスして後半に切り替えていくかが課題でした。それができて良かった」と手応えを口にした。

■バグが起こり始めてる

一方、逆転で3位に食い込んだ韓国の17歳、劉永(ユ・ヨン)との差はトリプルアクセル(3回転半)を跳んだかどうか、が確かな差となった。坂本は同ジャンプに挑戦中ではあるが、視点は異なる。海外勢と対峙(たいじ)した開幕戦を終えて言った。

「感じていることはやっぱり、大技に勝つには安定感が大事だなと。自分はトリプルアクセル以上のものがないので、どれだけクオリティーの高いエレメンツをやるかが重要になると毎試合、思ってます」

いずれにしても、これで今月2日のジャパン・オープンから近畿選手権、22年北京五輪テスト大会アジアンオープントロフィー、今大会と4連戦が終了した。中国からの帰国翌日に米国へ飛ぶ過密日程だったが「もう、しんどいのはないんですけど、どっかネジが外れてるんじゃないかな。笑うとこないのに勝手に笑ったり。バグが起こり始めてる」と笑い飛ばす元気がある。

■伸びしろがあるということ

「ここまでの連戦は今までなくて不安だったんですけど、1週間ごとにどんどん良くなっていって。今回フリーで140点が出ましたけど(2本目の3回転)ルッツがアテンション(エッジ不明瞭)だったり、スピンを間違えてレベルを落としたりしていた。伸びしろがあるということ。次までに伸ばしたい」とも確認できた。第4戦NHK杯(11月12~14日、東京・代々木第1体育館)に向けて実りある、中国から米国への転戦となった。【木下淳】