関西大学ラグビーで23季ぶりの優勝に王手をかけた6戦全勝の京都産業大は、最終節(4日、たけびしスタジアム京都)で全敗の関西学院大と対戦する。

2日は同大学内で練習を公開し、先発メンバーを発表。今季から指揮を執る元日本代表SOでOBの広瀬佳司監督(48)が合同取材に応じ、「日本一を目指してやっていきます」と冷静な口調で明かした。

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-広瀬監督が在学した90年代、京産大はとても強かった。それ以来の関西制覇が近づいています

広瀬監督 正直なところ、20年以上も遠ざかっているとは知らなかったです。大学選手権にも出ていましたし、まさか優勝していないとは思ってもいなかった。(監督就任後の)今年になって知りました。

-どういう理念で指導にあたっていますか

広瀬監督 今となってはどこの大学もやっていますが(在学時代に)朝の練習があった。確かにキツいことでした。でも、大学時代の経験が自分の礎であり、バックボーンとして生きている。厳しい練習をこなしながら、関西制覇を目指し、国立に行くんだと。そういう、普通の学生とは違う時間を過ごしてきた。自由ではなかったですけれど、今でも自分の力になっている。学生には「苦しいことから逃げない」。社会に出て、そういう人間になって欲しいと。朝起きるのはつらいし、厳しい練習でグラウンドから逃げ出したくなることもある。でも、社会に出た時に役立つよということは(開幕前の)ミーティングで話をしました。大学スポーツを預かっている身としては、社会に出て活躍できる人間を育てたい。

-監督として、これまでの経験を基に、自分の色を出そうという思いはありますか

広瀬監督 そういう(自分の色を出す)のは極力、やらないようにしています。継承が一番の強化の近道。自分たちがこれまでやってきたことを理解して、信じることができれば上位にいける。スポーツはDNAや文化を持っているチームは強い。(京産大に)文化はある。まだ日本一にはなっていないですけれど、文化を壊さないことが一番大事だと思っています。OBとして外から見ていて、京産大のラグビーに感銘を受けているファンが多いんですね。そのファンを裏切らないこと。みなさんに喜んでもらわないといけない。何も変えずに、これまで通り必死に勝利を目指す中で醸し出される“ひたむきさ”。これが受け継がれる文化であり、48年近くもかけて大西先生(元監督)が作り上げてきたものだと思う。

-20数年前の京産大といえば、厳しい練習で有名でした

広瀬監督 厳しかったですけど、楽しかったですね。2つ上に吉田明さん(元日本代表CTB)がいて、2つ下に大畑(元日本代表WTB)が入ってきて。早稲田に勝って。強かったですし、ラグビーは楽しかった。僕らが学生の頃と比べると、(今は)練習量はたぶん3分の1くらい。時代も違いますけど、走る量は3分の1以下かも知れないです。僕らの頃は練習終わってから3キロ走って。朝にも8キロ走って、(週1回は)20キロ走があった。理不尽な根拠に基づかない練習は、今でも必要だと思います。今年も春とか夏にやりたかったんですけど、コロナの影響でできなかった。

-監督就任後に技術的なことでこだわってきたものはありますか

広瀬監督 タックルのスキルが低かったんですね。なので、ずっとタックルの練習をしています。基本的な技術を、徹底的に1年間やっている。踏み込んで、しっかりバインドする。(学生は)「またこの練習か…」と思っていると思う。そこが大切なんですね。僕の担当はアタックで、元木さん(GM=元日本代表CTB)はディフェンス、他にもボール争奪のところなどを分担しています。元木さんは尊敬している方なので、非常に助かっています。厳しいプレーのできる京産大らしい選手を育ててくれている。

-関西制覇の先には、既に出場が決まっている大学選手権があります

広瀬監督 前回大会で天理が優勝した時はうれしかったです。同じリーグですし、天理に勝てば…という、目標ができた。今年の関東は強い。よりレベルが上がっている。しっかり分析をして戦いたい。日本一を目指して、やっていきます。【取材=益子浩一】

◆関西リーグ優勝の行方 全日程を終えた近大(6勝1敗=勝ち点29)と京産大(6勝=同27)の2校に絞られた。勝ち点29で並べば直接対決で勝った京産大が優勝で、関学大戦は勝ち点2以上が必要。引き分け以上なら無条件で、敗戦でもボーナス点2(4トライ以上、7点差以内の敗戦)を得れば優勝。もう1試合の同大-天理大は勝った方が3位。

【関西リーグ暫定順位】

<1>近畿大 勝ち点29(6勝1敗)

<2>★京産大 同27(6勝)

<3>★同志社大 同21(4勝2敗)

<4>★天理大 同20(4勝2敗)

<5>立命大 同14(3勝4敗)

<6>関西大 同10(2勝5敗)

<7>摂南大 同6(1勝6敗)

<8>★関学大 同3(6敗)

(※★は1試合未消化。近大、京産大、同大、天理大の大学選手権は確定。摂南大、関学大が入れ替え戦へ)