北京オリンピック(五輪)開幕まで1カ月を切った。日本勢の活躍が期待されるスノーボードで、注目株の1人がビッグエアとスロープスタイルの2種目でメダル獲得を目指す飛田流輝(るき、22=日体大4年、ウィルレイズ所属)だ。大型ジャンプ台から空中に飛び出して技を繰り出すビッグエアでは、昨年3月の世界選手権(米コロラド州アスペン)で4位入賞。フィギュアスケートでは男子の羽生結弦の4回転半ジャンプに注目が集まる中で、こちらは5回転の大技でメダルにチャレンジする。

高さ30メートル以上、ビル10階相当の高さのジャンプ台を滑り降りて空中に舞い上がり、驚異的な回転技で得点を競い合うスノーボード・ビッグエア。18年平昌(ピョンチャン)五輪から採用されたこの種目で、飛田は「金メダルを取りたい」と意気込む。

技の進化とレベルアップが著しい種目。北京五輪で上位争いのカギとなりそうなのが横5回転の大技だ。平昌五輪では斜め軸の縦2回転、横4回転半技を決めたトゥータン(カナダ)が金メダルを獲得した。

昨季の世界選手権はマクモリス(カナダ)が縦3回転と横4回転を組み合わせた技を2度成功させて優勝。とはいえ、同大会での1つの技としての最高得点は3位クレベラン(ノルウェー)が3本目に決めた横5回転で、97・75点の高得点をマークした。

その世界選手権では飛田も果敢に5回転技に挑んだが、惜しくも着地に失敗。4位だった。しっかり立てていれば優勝できたと振り返る。「北京五輪ではエイティーン(5回転)がないと表彰台には上がれない」と覚悟を口にする。5回転技にも複数の種類があり、飛田の場合は横回転のみのフラットと呼ばれるスピンが特徴。多くの選手は回転がしやすくなる縦回転も交えるが、「横だけだと難しさが増す。そのフラットスピンが自分のスタイル」とあえてこだわる。難易度の高い技。極めるために体幹トレーニングを重ね、着地時の衝撃に耐えるための足腰も鍛え抜いてきた。

東京都足立区出身で、日体大スキー部4年。成長を見守ってきた父義弘さん(52)によれば、「1歳の時から、僕に抱かれて雪の上を滑っていた」。スノーボードに乗り始めたのは3歳の頃で、5歳の時には「大人と遜色ない滑りを笑いながらこなしていた。自分の息子だけど、これはやばいと思った(笑い)」と父は振り返る。

平昌五輪出場はかなわなかったが、19-20年シーズンにはスロープスタイルでW杯総合優勝を果たした。北京五輪での活躍を誓う若武者は、「スノーボードの楽しさやすごさ、アクロバティックな動きや迫力を、多くの人に見てもらいたい」。その名の通り高く飛び、流れるような技で輝くつもりでいる。切り札は5回転だ。【奥岡幹浩】

◆飛田流輝(とびた・るき)1999年(平11)5月7日生まれ、東京都足立区出身。東京・成立学園高-日体大。父の影響で3歳からスノーボードに乗り始める。当初はハーフパイプに取り組んだが、中学3年時にビッグエアとスロープスタイルに転向。18年全日本選手権スロープスタイル優勝。19-20年W杯スロープスタイル総合優勝。21年3月の世界選手権ではビッグエアで4位入賞。趣味はバス釣りやスノーボード。好きな食べ物は焼き肉とすし。

◆横5回転の大技 男子で主流となりつつある。日本勢も「勝つためには必須」「ないとメダルを取れない」と言うように、北京五輪で優勝争いの鍵を握りそうだ。今季のW杯第2戦を制した蘇翊鳴(中国)は斜め軸の縦3回転、横5回転技「トリプルコーク1800」を連続で決めたが、2回とも90点台に届かず。縦回転数や踏み切るスタンスなどで難度を上げ、着地のクリーンさも含めて完成度高く決めなければ点数は伸びない。

◆日体大スキー部 大学スキー界の名門。飛田は「スノーボード専用のトレーナーも雇ってもらい、大学のジムで定期的にトレーニングしてきた」と話す。同部には、スノーボード男子ハーフパイプで金メダル候補の戸塚優斗や、スキーアルペン男子竹内力音、同女子の水谷美穂、フリースタイル男子エアリアルの五十嵐晴冬らもおり、北京五輪出場を目指している。スキージャンプの高梨沙羅はOG。