柔道の今年1回目となる全日本男子合宿が15日、都内で報道公開され、鈴木桂治監督(41)らが取材に応じた。

「世界で戦う心構えの講習や実習なども取り入れ、この時期にしかできない強化合宿としたい」との目的通り、冬季オリンピック(五輪)スピードスケート日本代表などのメンタルコーチを務めた松下信武氏(77)を招き、研修会を実施。鈴木監督によると、まずアンケートを取って選手の不安要素を抽出し、各人の状況に応じた対策を導き出してもらったという。

66キロ級の阿部一二三や81キロ級の永瀬貴規ら、昨夏の東京五輪金メダリストを筆頭に、今秋の世界選手権(10月6~13日、タシケント)の代表が参加。鈴木監督は「メンタル的に不安定な要素がどこにあるのか、講義をしていただいた。選手も楽しみながら。質問もたくさん出ていた」と紹介。「大事なのは心の部分。五輪代表、金メダリストに加え、世界選手権の代表に初めてなった選手(90キロ級の増山香補)もいる合宿。新しいチームになったので心の部分を重点的に」と説明した。鈴木ジャパン初の合宿でもあり、早くも2年後に迫る24年パリ五輪へ、精神面を整えるところから強化を再開した。

松下氏は、長くスピードスケートのメンタル形成を支えてきた。05年のワールドカップ(W杯)で男子500メートルの加藤条治が世界記録(当時)を出した際のサポートを皮切りに、同種目の10年バンクーバー五輪では長島圭一郎の銀メダル、加藤の銅メダル獲得に力添え。18年平昌五輪では、支援選手の菊池彩花が女子団体追い抜き(チームパシュート)の一員として金メダルに輝いた。

その第一人者を招いてのメンタル強化。鈴木監督は「東京五輪と同じ準備をして、同じ状態をつくってもパリでは勝てない。東京以上のものに仕上げてパリで勝つために、技術的、肉体的な強化はもちろん継続していくが、メンタル面で落とさないことが一番大事。モチベーション、闘争本能を高め、反対に冷静な部分も考えながら。代表の自覚だけは新鮮味を失わないようにもしてほしい」と日の丸を背負う柔道家たちに求めた。【木下淳】