リーグ2位の埼玉(旧パナソニック)が初代王者に輝いた。同1位東京SG(旧サントリー)を18-12で振り切り、トップリーグ最終年だった昨季に続く日本一。チーム内に新型コロナウイルス陽性者が出た影響で開幕から2試合で不戦敗となったが、自慢の防御と意思疎通にこだわり、以降を16戦無敗で締めくくった。東京SGは昨季決勝に続き、埼玉の壁に阻まれた。

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残り11秒の正念場で乱れなかった。埼玉6点リードの後半39分49秒。SO山沢拓が自陣左隅のタックルで相手を倒した。すぐに内側のフッカー堀江、後ろのWTBコロインベテが加勢。相手の反則を告げる笛で3人はさけび、抱き合った。自由な攻撃が魅力の山沢拓は「得意なプレーじゃないけど、チームに貢献できた」と目を潤ませた。最後まで走った体重116キロのプロップ稲垣は胸を張った。

「うれしいです。やっぱり『初代』は特別感がある。1発目の優勝はすごく価値がある。自分たちの魅力をさらに伝えられました」

タックル時の約束事があった。下半身を狙う「T1」。ボールを奪いにかかる「T2」。攻撃が強みの相手に対し、1対1を作らない防御を極めた。稲垣は「3人目が行くなら必ず(ボールを)取ってこないといけない」。最後も全員が役割を遂行した結果だった。

開幕から2試合連続不戦敗。厳しい立場で徹底したのは意思疎通だった。4月の神戸戦後はNO8大西が自ら「終わった後に堀江さんにむちゃくちゃ怒られた。シビアに捉えて、本当に練習から修正したい」と切り出した。リーダー陣の1人、フランカー谷は「しゃべるとうまくいく。防御時も『何したいん?』『OK!』の繰り返し。しゃべれない時にミスが出る」。堀江も「うちはシビアに言うチーム。『お前、下手くそやな』『それせなアカンで』とか。僕も言う分、失敗できひん」と年齢に関係なく課題を共有し続けた。

この日も埼玉はぶれなかった。7点リードの前半終了間際、山沢拓がタックルで相手FBマッケンジーのトライを目前で阻止。1点差に迫られた後半33分、CTBライリーが貴重なトライで主導権を引き寄せた。失ったトライは0。フッカー坂手主将が言い切った。

「最後の1秒まで、どちらに転ぶか分からなかった。1年間やってきたことが出せた。誇りに思います」

誰もが納得する初代王者の誕生だった。【松本航】

◆埼玉パナソニックワイルドナイツ 1960年(昭35)創部。2011年度、前身の三洋電機がパナソニックの完全子会社になりチーム名を「パナソニック」に。愛称ワイルドナイツは「野武士」の意味。昨年9月に本拠地を群馬・太田市から埼玉・熊谷市に移す