3月の世界選手権で初優勝した宇野昌磨(24=トヨタ自動車)が、いら立っている。4回転のフリップ、ループ、サルコー、トーループ4種5本を操る冬季オリンピック(五輪)メダル3個の保持者が、第2戦スケートカナダに続くGP2連勝がかかる国内戦を前に感情をあらわにした。

公式練習後の取材エリアで、何度も「いらだち」という言葉を使った。

「練習を通して意味がないなと思いながら、むかつきながらずっとやってました。できない時だからこそ向き合わないといけない時もありますが」。

原因となったのは4回転フリップ。カナダでの試合を終えてからこの日まで、「自分へのいらだち」を多く感じながら過ごしてきたという。

「ただうまくいかないなら、やりがいですが、自分では反映させようとした技術をトライした時に、まったく反映されないというものにすごくいら立ちを感じます」「フリップは面白くないです、やっていて」。

素直に打ち明けた。失敗に理由があれば納得し、前を向ける。理由が分からず、毎日違う跳び方になってしまう。大会会場での練習でも状態は同じで、もどかしさが募った。

この日はランビエルコーチから、ジャンプごとにアドバイスをその都度送ってもらった。

「自分の気持ちは伝えていました。こういう時は本当にコーチの存在がありがたいなと思いますね」。

感謝の気持ちを抱きながら、ただ、インタビューであえて気持ちを隠さなかった面もある。

「いらだちは全面的に出てましたし、皆さんの前でも言葉にさせていただいてますし、だからこそ、試合でどんな気持ちになるか分からないですけど、投げ出すようなことはしたくなくて。どんな気持ちだったとしても全力でやりたい。こういう状況だからこそ、いつもとは違う気持ちで試合に挑めたらなと思ってます」。

感情をどう試合に向けていくか。その誓いには、苦しむ自分と闘う覚悟がにじんだ。【木下淳】