2連覇を狙う初代王者の埼玉ワイルドナイツ(旧パナソニック)が、開幕戦で白星発進した。

昨季4位のブレイブルーパス東京(旧東芝)に22-19で逆転勝利。5月に左膝前十字靱帯(じんたい)を断裂したSO松田力也(28)が公式戦復帰戦でトライし、日本代表の司令塔としても23年W杯フランス大会へ復調を印象づけた。

1部昇格組の相模原(旧三菱重工相模原)は34-8でBR東京(旧リコー)を下し、トヨタ(旧トヨタ自動車)は31-26で静岡(旧ヤマハ発動機)に勝利。来年5月20日の決勝まで個のアピール合戦も続く。

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7カ月のブランクがあっても、松田の嗅覚に狂いはなかった。4点を追う後半15分。相手陣10メートルライン付近の右中間でボールを持つと、右へパスする選択肢を消した。「ここは勝負だ」。前のスペースへと走り、突破した。防御ライン裏に出ると、内、外へと角度を変え、最後はタックルを受けながら約40メートル先のインゴールへ飛び込んだ。一時逆転のトライで仲間の祝福を受け「空いていればランをする。シンプル。みんながつないでくれ、自分がトライをしただけ」と喜んだ。

地道で驚異的な復帰ロードだった。昨季のリーグ最終節となった5月7日東京ベイ戦で負傷。優勝を懸けたプレーオフも、日本代表活動も参加できなかった。36歳のフッカー堀江らを支えるトレーナー佐藤義人氏とリハビリに励む日々。W杯まで1年を切る状況下でも努力を続け「誰も開幕に間に合うと思っていなかった。佐藤さんは『絶対に大丈夫』と言ってくれた。(トライも)昔だったら走りきれていないんじゃないか」と成長して帰ってきた。

その姿は発奮材料になる。後半22分に松田と交代したSO山沢拓也は、同点の31分に約22メートルの決勝PGを決めた。今秋は山沢や21歳の李(神戸)が日本代表の背番号10を背負い、欧州でのテストマッチに出場。この日は相手の先発CTBだった中尾を含め、司令塔を懸けたアピールの舞台はリーグワンに移った。19年W杯代表の松田はゴールキックの精度の低さに「(採点は)50点ぐらい」と慢心せず、山沢も「自分と力也の良さは違う。2人の良さを出せば、チームとしても良くなっていく」と言い切った。

競技は違うが、サッカー日本代表はW杯で格上のドイツ、スペインに勝利。フッカー坂手は「我慢の時間がある中で、得点を取る時に取れるか。僕たちも目指さないといけない」と代表主将の立場で誓った。0-13からの開幕戦勝利。約9カ月後のW杯を目指す個の競争の先に、埼玉の2連覇が見えてくる。【松本航】