パリへの切符はつかめなかった。世界ランキング8位の女子日本代表が、今大会での五輪出場権獲得を逃した。
5勝1敗で並んでいた同4位ブラジルとの最終戦にフルセットで敗戦。プールBで3位となり、2位までに与えられる来夏のパリ五輪切符にあと1歩届かなかった。五輪出場枠は12で、開催国枠に加え、今大会でプールBのトルコ、ブラジルを含め、各プール上位2カ国計6カ国が決定。日本は残る5枠入りに向け、来年6月のネーションズリーグ(VNL)予選ラウンド終了時までの世界ランキング上昇を目指す。30日には男子のW杯が開幕する。
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悔しい敗戦にも、古賀紗理那主将の言葉に悲壮感はなかった。「課題の中にも希望があった」。セットカウント1-2で迎えた第4セット(S)を25-15で奪いタイに持ち込むも、最終5Sは10-15。ブラジルの底力に屈し、92年バルセロナ五輪以来となる開幕前年の出場権獲得はかなわなかった。パリ五輪切符は、来年6月のVNL予選ラウンド終了まで持ち越し。それでも、世界トップクラスに真っ向勝負を挑み、手応えはつかんだ。主将は「終盤の戦い方がまだまだ」と反省点を挙げると同時に「1人1人が自分の役割を意識できている。その点が去年より全然良くなっていると感じる」と、仕切り直しとなる五輪レースへ前を向いた。
9日間で7戦を戦い終えた真鍋監督は、かみしめるように言った。「チームとしてキャプテン古賀を中心に1つになったと感じる。役職は人を変える。話をするのは苦手だったが、経験を伝え、よく14人を1つにしてくれた」。
古賀は世界で勝てるチームになるため、チーム力の向上を叫んできた。友達のような「仲良し」関係はいらない。気になる点があれば、年齢は関係なく試合中でも問いかけた。「今、何で点を取られたと思う?」「そのポジションにいたのはなぜ?」。どんな時でも優先するのは勝利。試合の度にかすれる声が、それを物語っていた。
チームのためには練習から妥協しなかった。「私はいつも思ったことを正直に言う」。大会1カ月前の鹿児島合宿。真剣な表情で訴えかけた。数人の選手がただ与えられたメニューをこなしているだけのように見えた時だった。「全員に『試合に出て活躍したい』という気持ちがあるのか。日本代表としての責任を感じないといけない」。あえて強い言葉で呼びかけ、1人1人に日の丸を背負う責任感を求めた。表情やしぐさを観察することを日課にする主将だからこその気づきだった。
訴え続けてきた組織力の向上は、実感できた。「次の年が本当の勝負。まずは五輪の切符をとらないとメダル獲得というチーム目標を達成できない。また挑戦できるように強くなる」。この試合、古賀自身は決定率の低下もあり、第4、5Sはコートに立たず、ベンチからメンバーを鼓舞した。その悔しさもある。チーム一丸で世界トップと渡り合った手応えを手に、パリに向けてリスタートする。【勝部晃多】
◆ブラジル戦VTR 第1Sを失って迎えた第2S。1-1から古賀が強烈なスパイクを決めると一気に7連続得点で先行し、25-22で追いついた。第3Sは2度のセットポイントを奪ったものの、最後は3連続失点で失った。後がなくなった第4Sは、今大会初めてスタートから古賀をベンチに。石川を攻撃の軸に据えて総力戦を挑み、25-15で取ってタイに。先行された最終Sも1度は10-10と追いつく意地を見せたが、粘り切れずに押し切られた。
◆パリ五輪への道 パリ五輪の出場枠は、開催国フランスを含めて12カ国・地域。今回のW杯は世界ランキング上位24カ国が8チームずつ3組に分かれて、総当たりで対戦した。女子は中国(プールA)日本(B)ポーランド(C)で開催され、男子はブラジル(A)日本(B)中国(C)で30日に開幕する。男女とも各組上位2カ国の計6カ国ずつが出場権を獲得。女子日本代表は、この7枠に入れなかった。残る5枠は来年5月に始まるネーションズリーグ(VNL)の予選ラウンド終了時(6月17日時点)の世界ランキングで決定する。まず、今回の五輪予選で出場枠を獲得できなかったアジア・オセアニアとアフリカの最上位1枠ずつが最優先される。その後、最終の切符3枚をそれ以外のランキング全体上位3チームが手にする。
日本はVNLに出てポイントを重ね、よりランキングを上位へ上げることが必要になった。世界ランクは毎試合変動し、25日時点ではブラジルに負けて8位から9位に後退。1試合1試合、気の抜けない戦いが火の鳥NIPPONを待つことになった。