世界ランキング8位の日本が同15位サモアを38-19で下し、開幕3連勝を飾った。最後の1プレーでWTB松島幸太朗(26=サントリー)がチーム4トライ目を奪い、ボーナスポイント(BP)を獲得。目標の8強入りへ前進し、さらには1次リーグA組首位突破が見えた。

A組3位以内が確定し、23年W杯出場権を獲得した。次戦は13日。4年前に敗れた同9位スコットランドと、日産スタジアムで運命の一戦に臨む。

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スクリーンに表示された時計は84分を回っていた。31-19で迎えた、相手ゴール前の5メートルスクラム。攻撃権を持つ日本のFWが1歩、2歩と押し込み、NO8姫野和樹が飛び出した。BPを得られる4トライ以上を目指し、託したのはBKの攻撃。細かく左へパスをつなぎ、最後は松島がインゴールになだれ込んだ。貴重な勝ち点5を手にし、超満員の観衆が一斉に立ち上がった。

簡単ではない戦いだった。前半2分、7分とSO田村優のPG成功で主導権を握ったが、自陣での反則が多発。相手に3本のPGを許し、前半のリードは7点にとどまった。ジョセフ・ヘッドコーチは後半開始から33歳のフッカー堀江翔太を投入。11分には中島イシレリ、バル・アサエリ愛とFW最前列の両プロップを送り込んだ。もどかしい展開を打破しようと、サモアの分厚い壁をたたき続けた。

学びは4年前にあった。W杯イングランド大会の初戦、南アフリカ相手の歴史的勝利で喜びが爆発した。祝杯を挙げ、中3日で臨んだスコットランド戦は10-45と痛い黒星。当時を知るSH田中史朗は「お酒を飲んで、動けない人もいた」と苦い記憶を掘り起こした。

経験は無駄にしない。9月28日、真っ向勝負で強豪アイルランドを倒した夜、勝利を喜ぶロッカー室で選手たちが呼びかけ合った。

「ロッカールームを出た瞬間から、サモア戦やぞ!」

目標に掲げてきた「8強」を再確認する瞬間だった。W杯登録メンバー31人の約半数が外国出身選手。スタッフの1人は「日本には『勝ってかぶとの緒を締めよ』ということわざがある。しっかりと切り替えよう」と訴えた。そのフレーズだけに諭されるのではなく、余韻を引きずらない雰囲気を全員で作り上げた。移動に使った東京駅構内では花道が作られ、フィーバーは続く。それでも一夜で200通の祝福メッセージを受信したリーチは「大会が終わってから返したい。準備を変えないことが大事」とあるべき姿を示した。

最高の形で迎える1次リーグ最終戦。4年前、唯一の敗戦を喫したスコットランド相手に真価が問われる。その先には現在の「ティア1」(世界の強豪10カ国・地域)を除き、初の1次リーグ首位突破がちらつく。1位通過すれば準々決勝は南アフリカ、2位ならニュージーランドが濃厚だ。まずは次戦。4年間の全てをぶつけて、歴史を変える。【松本航】

▽ジョセフHC 今日の試合を誇りに思う。アイルランド戦の後に戦術を話し合って、しっかり準備できた。次戦もタフな試合になるだろう。

▽フランカー・ラブスカフニ 前半は苦戦したが、最後にボーナスポイントを取ることができた。最後の数分は素晴らしい応援が我々を引っ張ってくれた。

▽WTBレメキ フィジカルが強いチームだった。予想していたが、考えていた通りタフな試合になった。自分の仕事をすることに集中した。

▽FB山中 ハイパントやキックをうまく使おうという戦術だった。ボーナスポイントを取れて良い流れ。次も勝って決勝トーナメントに行きたい。

◆ティア1 ティアは「階級」を意味する。ラグビーにおけるティア1は、ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカ、アルゼンチンの南半球4カ国と、イングランド、ウェールズ、アイルランド、スコットランド、イタリア、フランスの欧州6カ国を指す。テストマッチで変動する世界ランキングと直接の関係性はなく、伝統や格なども考慮した総合的な実力で決まる。テストマッチやW杯の日程などで国際統括団体のワールドラグビーから優遇される。日本やサモアはティア2に所属。