ラグビーW杯フランス大会に臨んだ日本代表の戦いが、2勝2敗の1次リーグ敗退で幕を下ろした。4年前の日本大会は過去最高の8強。16年から率いたジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチ(HC、53)は退任し、バトンは新体制に移る。今年5月に従来の北半球、南半球の強豪10カ国「ティア1」に加わり、「ハイパフォーマンスユニオン」の一員となった日本。この4年間の歩みで突きつけられた課題、同時に積み重ねられた次回27年オーストラリア大会への財産を、前後編2回連載でひもとく。
◇ ◇ ◇
「ラスト20分の戦い。日本代表の弱点。最後のピースです」。勝てば2大会連続8強のアルゼンチン戦に敗れた後、リーチはかみしめるように言った。
後半残り20分-。リーチの言葉は数字に如実に表れた。
【後半20分以降の得失点】
◆第1戦チリ戦(42○12) 得点14/失点0
◆第2戦イングランド戦(12●34) 得点0/失点14
◆第3戦サモア戦(28○22) 得点3/失点14
◆第4戦アルゼンチン戦(27●39) 得点7/失点10
4試合で日本が挙げた得点は、トライ3本(Gはいずれも成功)とPG1本の計24点。対して失点は、チリ戦こそ0も、残り3戦で5トライ(Gはいずれも成功)+PG1本の38点を献上した。
アルゼンチン戦の後半を振り返る。FWは開始から11分間で4人を入れ替え。先発のプロップ稲垣、フッカー堀江、ロックのファカタバらを下げ、ミラー、坂手、ディアンズら肉弾戦に対抗する活力ある人材を投入した。一方BKは、20分にWTB松島→ナイカブラ、30分にCTB中村→山中のみ。流を負傷で欠いたSHは斎藤がフル出場した。日本がこだわったスタイルは速く、ボールを動かすラグビー。選手交代を潮目とするのが現代の主流で実際、後半20分以降で奪った3トライのうち2本は、途中出場のディアンズ(チリ戦)ナイカブラ(アルゼンチン戦)があげている。その中で、大一番の攻撃の起点は最後まで1人に委ねた。
W杯の登録メンバーは33人。1次リーグを突破したイングランド、アルゼンチンは4戦でその全員を起用したが、日本は5選手に出場機会がなかった。4年前の日本大会。準々決勝で南アフリカに圧倒され、スクラム担当の長谷川コーチは疲労がたまったプロップ具の姿に「あそこまでボロボロになるとは」と選手層の差を口にした。理想は全登録メンバーによる総力戦。FW陣はハラシリ、垣永、堀越、ガンターが未出場も、大会を通して及第点のプレーをみせた。対してBKの出番なしは小倉のみ。アルゼンチン戦後半での交代判断との、この“矛盾”が「選手層」という課題を顕著に示す。
やむを得ず、底上げプランが崩れた背景はある。コロナ禍で20年の代表活動が休止。BK陣の次世代候補であるSH斎藤&福田、WTBフィフィタらに「サンウルブズ」メンバーとして国際経験を積ませたかった世界最高峰スーパーラグビーは、わずか6試合で打ちきりとなった。代表活動の再開も、20年10月から欧州6カ国対抗を再開していたイングランドなどに対し、21年5月だった。
準備期間短縮を強いられた中、限られた代表戦で勝利にこだわったことも反動となった。21~22年に行われたティア1戦(全英アイルランド代表ライオンズ含む)で10戦全敗。この結果からか、今年の本番前6試合はSHを流、斎藤で固定した。FBは昨秋は山中をテストマッチ全3戦でスタメン起用し、WTBではフィフィタが2戦で先発。しかし、山中は当初のメンバーから外れての追加招集となり、ともにW杯出場はアルゼンチン戦1試合のみだった。選考の場でもある準備期間の試合で「勝つため」の起用を続け、貴重な実戦機会を多くの選手に与えられず。本番に向けた底上げを図りきれなかった。
「ラスト20分の戦い」を制していくには、選手層の厚さが不可欠となる。メンバーの土台であるリーグワンは、上位チームが海外リーグと戦う「クロスボーダーマッチ」を調整中。強化担当の藤井ディレクターは代表に近い大学3、4年生らで構成した「ジュニア・ジャパン」などで若手が国際舞台を踏む必要性を訴える。世代交代を図りながら、いかに底上げするか。4年後は、すぐにやってくる。【松本航】




