大相撲の時津風部屋力士暴行死事件で、序ノ口力士の時太山(当時17=本名・斎藤俊さん)を暴行し、兄弟子に暴行を指示したなどとして傷害致死罪に問われた元親方山本順一被告(58)の第6回公判が11日、名古屋地裁で行われた。午前中は、04年3月から同6月まで時津風部屋に在籍していた元力士が、弁護側の証人と出廷。同部屋にはびこっていたという「いじめ」について語った。

 元力士はいじめは、同事件で執行猶予付きの有罪判決を受けた兄弟子A(26)を中心に行われ「自分は週3、4回は殴られていた。金属バットで殴りかかるふりをされ、脅されたこともあった。自分の失敗のせいで別の兄弟子がAからめった打ちにされたこともあった」などと証言した。また、複数の兄弟子から暴行を受けたことも振り返り、「その場には梶原さん(幕内豊ノ島)もいたけど、手を出すことはなく、『そこまでしなくてもいいのでは』という止めたそうな顔をしていた」などと話した。Aは、自身が傷害致死罪に問われた裁判の中で「部屋にいじめはなかった」と話しているが、この元力士は「よくもそんなウソがつけるなと思う」と断じた。

 元力士は山本被告夫人のスカウトで入門し、証言でも「自分にとっては、親方(山本被告)はやさしい人だった」などと元親方を慕っていた様子を明かした。その上で「兄弟子からのいじめを受けない安全な場所は親方の部屋だった。親方の前では、兄弟子はいい兄弟子を演じていた」と証言した。

 一方で山本被告が、「いじめ」について気付いてなかったのかの問いには「うすうすは知っていたと思う」と証言。検察側が「被告から、体罰を禁じる指導はなかったのか」と指摘すると、元力士は「それはなかった」と話した。