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超最新バーチャル技術で東京五輪が見えた その2

デジタルミュージアムや交通手段にも応用

東大キャンバスでバーチャル映像を再現
東大キャンバスでバーチャル映像を再現

-バイヨン寺院、飛鳥京以外にはどんなプランがあるんですか
 池内教授 奈良の興福寺などは廃仏毀釈で仏像が世界中に散らばってしまっています。世界中に散らばった仏像の3次元データを取って、興福寺の伽羅のモデルをつくって、実際に現場で仏像を含めたバーチャル映像を見られるようにもできる。興福寺は当時の建物を再現される計画をお持ちのようですが、建物を建てるのはいいけれど中に何を入れるかというのも問題になると思います。バーチャルをお使いになるのも良いのではないかと思っています。さらに大事なのは「もの」だけではなく、そこで何が起こっていたかという「こと」もバーチャルで見せられればということです。単に物だけでなく、そこでの人々の生活なども見ることができれば、バーチャル・リアリティー(VR)技術というのは素晴らしくなると思います。こういった方向で、デジタルミュージアムというプロジェクトをやっていければと思います。現在の博物館も素晴らしいのですが、陳列がともすれば静的になりがちです。「もの」が主体の展示です。ダイナミックに「こと」の展示をする必要があるでしょう。音声ガイドはある意味でダイナミックさ、「こと」をもたらすものですが、音声だけではなく実物を見つつそこに説明が出て、バーチャルも織り交ぜて「その時歴史は動いた」的に陳列物を楽しめる、理解できるようにしていくのがポイントではないかと思っています。

-いろいろな可能性があるんですね
 池内教授 ゴーグルとカートなどの移動手段をドッキングさせることも考えています。観光地は交通が不便なところも多い。どうすれば観光客に満足感を与えられるか、移動時間も含めて、そういうデバイスを移動手段に組み込んでいくかという研究もしています。今のナビゲーションシステムは車用のもので、2輪車にナビをつけたらものすごく危ないと思います。よく自転車に乗って、携帯電話を操作している人を見かけますが、非常に危ない。自転車、バイクといった乗り物には、それに適したナビシステムが必要です。そのナビシステムに複合現実感をドッキングさせることによって、新しい交通システムができたらと思っています。

-先生の五輪への思いというのは
 池内教授 それはもう、ぜひ東京でやってほしい。今回、東京都さんに我々のシステムを使ってもらって、大学の技術も社会的に役に立つのだな、ということが分かってもらえて大変有意義だったと思っています。

◆池内克史(いけうち・かつし)
  1949年(昭24)、大阪府生まれ。73年、京大工学部機械工学科卒。75年、東大大学院工学系研究科情報工学専攻博士課程終了。工学博士。
 MIT人工知能研究所研究員、電子技術総合研究所研究官/主任研究官、カーネギーメロン大学研究准教授/研究教授を経て、96年、東大生産技術研究所教授。00年4月から東大大学院情報学環教授。
 専門分野は、画像処理の基礎理論やそれを応用したロボットの眼やVRシステム。

ベンチャー企業「アスカラボ」が実作業を

ゴーグルをかけると仮想五輪スタジアムが浮かび上がった (画像は東大・池内研究室資料より)
ゴーグルをかけると仮想五輪スタジアムが浮かび上がった (画像は東大・池内研究室資料より)

 五輪スタジアムのバーチャル映像実現には「アスカラボ」というベンチャー企業がかかわった。この会社は池内教授の研究室の角田哲也氏らが中心になって立ち上げたものだ。池内教授が説明する。「今回東京都から仕事を請け負うのに、大学としてやるのはちょっとおかしいのではないかということで、受け皿としてアスカラボをつくりました。そこで学生たちが実際に作業をする形にしました」。この試みには大学での研究成果で広く社会に貢献していきたいという池内教授の思いが込められている。

 米国の大学の周囲にはいくつものベンチャー企業が存在し、大学で開発された技術を広く民間に流し、広める役割を担っているという。学生が在学中に大学で生み出したプログラムやデータベースなどは、手入れをするメンバーがいないため、その学生の卒業後は活用されずに捨てられてしまうケースも少なくない。そんな貴重なソフト資産を会社組織に移してメンテナンスを続け、運用していくことが大切だ。本来、米国の大学周辺のベンチャー企業はこの方向のためのもので、その中からたまたま大きな利益を生むものが現れる。ただ、基本はあくまで大学の資産の社会への還元がメーンだ。多くのベンチャー企業がある米国では、この点でコンセンサスが取れているが、日本には同様のシステムが存在しない。「だからソフト業界はすべて米国にやられてしまっています。このままでは日本の大学の足腰が弱ってしまうと思います」と池内教授。最初にシステムや技術をつくるのは大学だが、それを継続的に運用し社会貢献する組織のモデルとしてとしてアスカラボが誕生した。

東大のキャンパスに晴海五輪スタジアムが

 バーチャル映像を体験した。取材で訪問した東京都目黒区の東大駒場キャンパスの中庭に、実際に複合現実感システムを設定してもらった。背景映像は目の前の中庭で、そこに晴海の仮想五輪スタジアムができ上がったために多少の違和感はあった。しかし、スタジアム前に色とりどりのポールが立ち並び、人々が次々に入場していくシーンはまさに本物。スタジアムのメーントラックでは男子100メートル決勝が行われ、世界新記録での優勝シーンに客席が興奮に包まれる…。ゴーグルをかけたまま視線をぐるりと巡らせると、バックスタンドからメーンスタンドがリアルに揺れているのが体感できた。4月に来日したIOC評価会員は、晴海の予定地に、計画通りに建設されたスタジアムを見たわけで、高い評価につながったのもうなずける映像だった。

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