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インフラの概念、私たちの暮らしが変わる その1

 なぜ今、東京五輪招致を目指すのか? この疑問に明確に答えてくれたのが東大大学院情報学環・坂村健教授(58)です。2016年五輪へ向けて坂村教授が提案するデジタルサイネージ(注1)を利用したチケット販売、流通管理とサービス提供の技術は、私たちの生活を大きく変えるまったく新しいインフラでした。今年4月に来日したIOC(国際オリンピック委員会)評価委員会にも高く評価された、日本独自のアピールポイントについて聞きました。思わず納得、です。

全部まとめて…ひと粒で何度もおいしい!

デジタルサイネージを利用したシステムについて語る坂村教授
デジタルサイネージを利用したシステムについて語る坂村教授

Q=デジタルサイネージを利用してチケットの販売管理をするということなんですが
 A=販売管理だけではなく、世界中から日本に来るお客さま、日本人も含めてですが、そんな方々にいろいろなサービスを提供するということも含みます。ICT(注2)技術でチケットの偽造防止から流通管理と、チケット購入者へのサービスについて、すべて同じ基盤の上で対応しようということ。これまでは偽造防止は防止だけ、サービスはサービスだけで分かれていたけど、今回は1つ電子チップを核にチケットの偽造監視も、流通コントロールも、サービスも、競技会場管理もやるということです。つまり一粒で何度もおいしい、ということ。

Q=過去の大きな国際大会で起きたチケット問題を一手に解消できるということですか
 A=技術的には可能です。ただ、五輪だけのために電子チケットの発行端末を世界の隅々にまで持ち込むのは現実的ではない。そこで従来の偽造防止用のホログラム(注3)に注目しました。これは非常に薄いアルミの箔。電子チップは極小の電子回路で薄いシリコンの板なのですが、電波を当てると作動する。その電波を受けるアンテナとしてホログラムを利用しようというものです。電子回路とホログラムを合体させたものをチケットに貼り付ける。販売にあたって端末のない所ではホログラムで管理してもらい、環境が整備された所では電子回路による識別、管理が可能になります。

サイネージ端末で道案内も競技結果速報も

ホログラムを利用したチケット
ホログラムを利用したチケット

Q=五輪開催中はどのようになるのですか
 A=交通結節点やホテル、競技会場などにデジタルサイネージ端末を設置します。例えばフランス語圏から来た人が柔道のチケットを地下鉄銀座駅で端末にかざしたとしましょう。するとフランス語の音声、映像で武道館までの交通機関や道案内を見聞きできる。16年には多くの人が高機能携帯電話を持っているはずで、端末から瞬時に必要な情報を携帯に取り込むことも可能になる。柔道のフランス代表選手の試合結果速報やメダル獲得情報なども瞬時に知ることができるでしょう。

Q=流通管理の面では
 A=競技会場の入口や会場内のゲートでチケットを端末にかざしてもらいます。それで使用状況が確認できる。例えば「競技開始10分前までに入場」というルールを設けておけば、瞬時に未入場者のチケットをリセールできます。五輪では人気、不人気競技の格差が大きく、テレビ放送の関係で問題がある場合もすぐに対応が可能になる。すぐにリセールして会場を埋めることができます。これまでの手作業集計では無理でした。電子チップに購入者の情報などをインプットしておくことで、管理もできるしサービスもできるわけです。

トラブル発生時の対応も迅速かつ効率的に

ゲートでチケットを端末にかざすと使用状況がリアルタイムで確認できる
ゲートでチケットを端末にかざすと使用状況がリアルタイムで確認できる

Q=セキュリティー面でも効果がありそうですね
 A=会場のどこに何人の人がいるかという情報も一括管理できるので、例えば火災が発生しても避難誘導が格段に効率的になる。テロ関連で要注意人物が入場していると分かれば、チケット情報からどの席に座っているのかも簡単に特定できます。

Q=チケットを購入してもサービスを使いこなせない人がでてくるのでは
 A=とりあえず端末にチケットをかざしてみてと伝えることはできる。例えば目の不自由な方には端末から母国語の音声ガイドが流れるといったように、コンピューターの方からその人に近づくことである程度のサービスを提供できる。より積極的にサービスを受けたい人には、ICカードのような高度なチケットを購入してもらい、その中に複数のチケットを取り込むこともできる。そのカードで公共交通機関をフリーで利用可能にしたり、スタンプラリーのようにポイントをためるようなサービスも考えられる。そんなハイローミックスで対応していきたい。

※注1  デジタルサイネージ
 電車内やデパート、スーパーなどの店舗、イベント会場などに設置されたディスプレー端末を利用して広告動画などを流すメディアのこと。映像表現を駆使することで高い訴求力があり、時間や場所に応じた映像コンテンツを自在に選択して表示できるため、新しい広告メディア、コミュニケーションツールとして注目されている。

※注2  ICT
 「Information and Communication Technology」。通常「情報通信技術」と略される。「IT」(Information Technology)とほぼ同じ意味だが、これに代わる表現として一般化しつつある。ネットワーク通信による情報、知識の共有を意識したもので、ユビキタス(注4)社会に沿った表現と認識されている。

※注3  ホログラム
 クレジットカードや有価証券、紙幣などに見られる3次元像を平面的な金属箔に記録したもの。金属箔によって反射された光が像を再生し、偽造防止などに利用される。「ホログラフィ」はホログラムをつくる技術のこと。

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