<社会人野球日本選手権:日産自動車3-0JR東日本東北>◇13日◇1回戦◇京セラドーム大阪

 恩返しは、プロで果たす-。JR東日本東北(宮城)は0-3で日産自動車(神奈川)に敗れ、初戦で姿を消した。ソフトバンク・ドラフト5位指名のエース摂津正(26=秋田経法大付)が7回を8安打8三振3失点と力投も、打線の援護に恵まれなかった。社会人最後の舞台は初戦で涙をのんだが、8年間で培った経験を新天地で生かすことを誓った。

 試合後、摂津はチームメート1人1人に声をかけた。「長い間、ありがとうございました」。唇をかみしめる摂津を、仲間は肩をたたいてねぎらった。立ち上がり、詰まった打球が外野の前に落ちる不運に見舞われた。ピンチで高めに浮いた球を痛打され、4回まで毎回安打の3失点。チームの一員として臨んだ最後の大会は、昨年の4強入りにも届かず、わずか1日で終わった。

 それでも、力を出し切ったマウンドだった。最速144キロの直球と多彩な変化球で8三振を奪い、四球は1個だけと、自慢の制球力を発揮。「相手は意識しない、自分の投球ができた」。133球を納得の表情で振り返った。バックネット裏で見詰めたソフトバンク作山スカウトも「芯で捕らえられたヒットは少なかった」と評価した。

 昨年は日本代表としてW杯(台湾)に出場し、銅メダルと大会MVPを獲得。チームに所属した8年間で得たのは、マウンドさばきだけではなかった。会社では設備企画部門に所属。積極的にアイデアを出し、業務に励んだ。「野球の技術もたくさん学んだけど、精神面で我慢強くなれたと思う」。上司である佐々木靖之マネジャーも「いつもまじめで、後輩の見本となる社員でした」と話した。

 摂津は報道陣に、目に涙をためて言った。「プロでは、1軍で1年間投げられるようになりたい。楽天戦で投げたいですね」。多くを学んだ仙台で雄姿を見せ、チームメートや社員に恩返しすることを誓った。【由本裕貴】