<全日本大学野球選手権:東洋大5-0東海大>◇決勝◇13日◇神宮

 東洋大(東都)が2年ぶり3度目の日本一に輝いた。11年のドラフト目玉候補対決は、東洋大・藤岡貴裕投手(3年=桐生一)が5安打9奪三振完封で、東海大・菅野智之投手(3年=東海大相模)に投げ勝った。決勝完封は01年の東海大・久保(現巨人)以来9年ぶり。藤岡は春のリーグ戦に続き最高殊勲選手賞を受賞した。東都大学連盟は23度目の優勝となり、22度で並んでいた東京6大学連盟を抜いて単独1位になった。

 宙に舞うはずの東洋大・高橋昭雄監督(62)の体が上がらない。逆に歓喜の輪に沈んだ。輪の中にいた藤岡の前に落ちた。「90キロを超えてますからね。(選手は)力を使い果たしたかなあ」と同監督が笑えば、MVP藤岡も「上げようと思ったら落ちてきました」とこれまた笑顔だった。

 3年生左腕が、155キロ右腕の菅野に投げ勝った。5安打完封。「同じ学年なんで負けられないと思いました」。最速は147キロ、それも1球だけ。しかし菅野が奪った空振り数2に対し、藤岡は17を数えた。1回2死二塁。4番伏見は137キロの速球で空振り三振に仕留めた。球速ではなくキレで打者を惑わせた。

 緩いカーブを見せ、内外角低めに速球を決めた。群馬・渋川市の自宅庭にはマウンドがある。小学時代から父茂さん(59)相手に投球練習。ミットの位置は常に内外角低めいっぱいだった。その投球を、父が見守る神宮の、日本一を決める決勝戦でやってのけた。「強気で攻めました」。

 大会前の4日には部員120人が集合して、監督夫人・初江さん手づくりのカツカレーを食べて盛り上がった。全員で優勝をつかむつもりだった。1回、藤岡が先頭に四球を出すと、3年生内山がブルペンに走った。5回には主将鹿沼が投球練習を開始した。高橋監督は「1点もやらないと誓っていた。それを(藤岡)1人でやってくれました」と満足げに振り返った。

 「最後までしっかり投げられてよかった。世界大会?

 選ばれれば、世界で投げたいです」。母校を2年ぶりの日本一に導いた左腕が、7月日本で開催される世界大学野球選手権へ、初めて意欲を口にした。【米谷輝昭】