早大・斎藤佑樹投手(4年=早実)の大学ラストシーズンが始まる。東京6大学野球秋季リーグ戦が、11日に開幕する。開幕カードは法大と対戦。斎藤は過去7シーズン54試合に登板し、27勝12敗、防御率1・59の成績を誇る。通算奪三振は294三振で、東京6大学史上6人目の「30勝&300三振」は目前だ。

 斎藤が意外な言葉を口にしたのは8月22日、佐賀・唐津市で行われた講演会だった。甲子園決勝の翌日、早大進学を夢見る若者たちを前にして、挫折の経験を語り始めた。

 斎藤

 大学に入ってからは、ほぼずっとつらい経験をしている。今まで野球を辞めたい時?

 結構あったと思います。

 早実3年夏の甲子園で優勝し、早大に進学。80年ぶりの1年生開幕戦勝利、全日本大学野球選手権1年生史上初のMVP…と数々の実績を積み上げた。だが、今春は2勝3敗と初めて黒星が先行した。勝てば優勝の早慶戦で敗れ、地元開催の世界大学野球選手権は、準決勝の米国戦で満塁本塁打を浴びて敗戦投手になった。

 輝かしい実績の中で、心には葛藤(かっとう)があった。だからこそ、大学最後のシーズンにかける思いは強い。

 夏の強化練習では、厳しい走り込みを行った。「学生野球は最後になるので、がむしゃらにやりたい」と言う。今夏のオープン戦は、1位指名を公言するロッテが、全14試合を視察した。各球団は早大グラウンドを中心に帯同。斎藤は4試合に先発し、計25回を投げた。8失点完投した国学院大戦後は「結果はよくなかったですけど、自分が試したいことはできている。インサイドのコントロールと、低めのボールの出し入れ」と前向きにとらえた。

 競合確実のドラフトは10月28日に控える。

 通算30勝まではあと3勝、300三振はあと6個に迫る。オープン戦では投球時のグラブの位置、フォームのバランスなど試行錯誤を繰り返した。1年生からマウンドに上がり、日米大学野球選手権、世界大学選手権、遠征も米国、チェコ、ブラジル…とフル参戦したが、入学以来1日も練習を休んだことがない。4年間ケガでの離脱はなく、リーグ戦通算35週、夏は日本代表として投げ続けた。アイドル的存在から、4年間で強い選手になった。大学野球は残り最少で10試合。「完投」の先に、栄光が待つと信じている。【前田祐輔】