昨年の全日本大学野球選手権で北大を初のベスト8に導いた石山智也投手(22=北広島)が14日、社会人のクラブチーム・室蘭シャークスに初合流し、本格的に始動した。4月に正式入社する新日本製鉄グループ、太平工業(本社・東京)の室蘭支店での仕事もスタート。今をときめく「佑ちゃん世代」として神宮を沸かせた国立大の頭脳派右腕が、夢のプロ入りへ最初の1歩を踏み出した。

 新天地初日、石山には厳しい歓迎が待っていた。チームはこの日から、基礎体力を養う2週間の強化期間に入った。午後6時にスタートした新日鉄室蘭体育館での練習。首脳陣は「一番きつい練習だけど、暗くならないようにやろう。危ないと思ったら、途中でやめていいです」と言った。石山は不安そうな表情で聞いたが、チームメートと同じメニューに必死についていった。約2時間後、室蘭新日鉄球場の地下練習場に移動し、早くも投球練習さえ行った。

 期待は大きい。加藤徹監督(44)は「体は動いている。自分できちっと練習をやってきたようです。即戦力として、先発の一角に入ってほしい」と話した。昨春のオープン戦で北大と対戦し、石山には抑えられていた。この時点で獲得リストに挙がり、のちに投手としては一昨年11月に練習を始めたばかりだったということが分かって、評価はさらに高まった。

 北大の投手難から誕生した184センチ、78キロの急造右腕は、昨年6月の全日本大学野球選手権で真価を発揮した。最速139キロの直球にフォーク、スライダーを交え、1回戦で四国学院大(四国地区)を相手に1失点完投勝利。続く広島経大(広島6大学)、八戸大(北東北)と3試合に先発し、創部110年の歴史を誇る野球部を初の8強に導く原動力になった。

 「今日からリセットして野球をやります。チームに貢献できるよう練習したい」。ドラフト候補にも名を連ねたルーキーは、社会人野球に懸ける思いを口にした。チームは都市対抗本大会には01年に初出場したが、以降は遠ざかっている。日本選手権は昨年出場したが、初戦敗退に終わった。

 前身の新日鉄室蘭に17年間在籍し、公式戦で90以上の勝ち星を挙げた名投手、財前純二さん(62)は投手指導に加わっている。「フォークを磨き、全国に君臨する投手に育ってほしい」と注目する。「ここで結果を出し、プロの世界に行きたい」。石山は、佑ちゃん世代の仲間入りを視野に入れている。【中尾猛】